逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言  北尾吉孝

逆境を生き抜く名経営者、先哲の箴言 (朝日新書)

まえがきによれば、高校生の頃から経営者の箴言を読み解いてきたと述べられています。箴言を広辞苑で紐解けば“いましめとなる短い句”とあります。箴言が思考に染みこませ、行動を伴わせるには、素直さと相応の素地が必要だと思います。これを高校生に至るまでの鍛えたことは事態すでに人並みでではなく、箴言を語る側なのだと感じています。志高く信念を持って行動する。苦しい時、迷ったとき、身体に染み込んだ箴言が脳裏から湧き出ずるのでしょう。

成功を望むのなら、吸収可能な素地を鍛えることが条件だと思います。「吸収可能な素地」とは「信 義 仁」であり日々目的に向かい継続的に取組む心だと捉えています。それと同時に“素直な心”が必要なのではないでしょうか。箴言を残せる人物の回りには「類は友を呼ぶ」人々が「信 義 仁」を軸に間柄が成立しているように見えます。日経「交遊抄」などはその顕著な表れではないでしょうか。人の成長に最も大切な人間関係とはこれらの総和なのでしょう。著者は成功者についてこのように述べています。

「仏教に「多逢聖因」という言葉がある。良い人と出会っていると、いつしか良い結果を招き、その良い縁がされに良い縁を尋ねて発展していくという意味である。成功者の人生とはまさにこの言葉とおりで、よい人物を友に持つことで、困ったときにその友人が助けてくれる。そう考えると、運のよさ、たまたま、偶然、といった言葉で表現されることは、言い換えれば、何よりもまずその本人にひとかたならぬ魅力があるということなのだ」

“自己を磨く”ことが第一義であると読み解けます。いま、自分の置かれている環境を踏まえ、日々の仕事を通じて自己を研鑽する。これが成功の根源であり、「信義仁」と素直が根源をなすと思っています。この本質がすべての軸にあると感じます。数多くの名経営者の箴言は琴線を揺るがすことと思います。時として本書を手にすることをお勧めします。

 

日経ビジネス Associe 4  時間の活用

日経ビジネス Associe (アソシエ) 2013年 04月号 [雑誌]

 若者向けビジネス雑誌だと思いますが、タイトルによっては時折購入します。How toなので気づきを得ることもよくあります。中でも“時間管理”に関わるものは良く購入しているように思います。4月からライフスタイルが変化することから、1段上の時間管理術が求められそうです。そんな気持ちから本誌を読みました。

 はじめに【スタンフォードの自分を変える教室】著者・ケリー・マコガニル氏が誌上講義を行なっています。題名は「長期的ゴールを意識し小さな課題から緒戦せよ」とあります。脳にある長期と短期の2つのモードについて説明し、そのうえで「長期的モード」の大切さを述べています。長期モードとは「“自分が選んだものが、将来的にはどのような結果を及ぼすだろうか”と考えるモードです。“長期スパンで成功するために、今、何が必要か”を考えたり、他者との信頼関係を構築しようとしていきます」と述べています。

そのうえで「長期的に見て、自分にとって本当に必要なものは何か、そのためには今、何をすべきかを考える。このモードに入れば意志力は高まりやすい」指摘しています。“長期的視点での思考と行動”時間管理の軸であると同時に人生設計の基本のように感じます。この土台の上に立って日々の時間管理戦略を立てる必要があると痛感しています。大手企業の経営者やオピニオンリーダーや文化人は幾つもの役職を兼務しています。ひとつ一つの仕事の影響力は高くとても片手間でできるとは考えられません。意見には深い考えや知識の裏づけが必要であり、日々多くの学びが必要です。これを踏まえると時間が足りないのは「無駄」が多いのだと思えます。本誌にも記されていますが、時間ログを分解し無駄時間を削り、求める時間に転換することが必要なのでしょう。

 そのためにはケリー・マコガニル氏が述べるように「意志力を高め、時間を効率的に使いたいのならば、自分が人生の中で本当に成し遂げたいことは何かを考える時間をぜひ確保してください。人生の目標を曖昧なままにしておくと、目の前の仕事に集中するモチベーションも湧きにくいのですから」やはり“時間管理の基本は目的と目標設定にあり”ということになるのでしょう。意志が弱ければ緊急性の高い業務に追われることになり、結果として負のスパイラルに巻き込まれるのでしょう。他を優先順位の高い“目的”確定し、数年間は邁進することが大切なのだと思います。

 こうして自分の考えをまとめながら再読をしたのですが、新たな気づきを得たように思います。適度に考えるべきテーマなのだと思います。

 

不動心  松井秀喜

On 2013年3月25日, in life Style, by admin

不動心  松井秀喜

不動心 (新潮新書)

 こうした一流の選手の考え方や行動に常々興味があり機会ある毎に読むようにしている。それは、頂点を極める人の考え方や行動を自分の生活に取り入れたいと思うからだ。過日ルーチンについての本(プロフェッショナルの習慣録)を読んだが“繰り返しを繰り返す”勝ち続ける人の共通事項ではないかと思う。“素振り”を繰り返すことがホームランの一歩であると著者も語っている。継続の目安は3年だという。毎日3年間繰り返すと自分のモノになるといわれている。松井の素振りは小学生から引退まで続けられていたのだろう。人はこうした努力が“できる人とできない人”に二分されてしまうのだろうか。

松井は父からは「努力できることが才能である」学んだという。この言葉を素直に受け止め実直に努力を重ねたことによって松井秀喜が生まれたのだと思う。反骨精神から生まれることもある。しかし「努力できる素直な人」は一段上のステージに上がると思う。そしてまた利他の心をもつことで一層の厚みを増すのではないだろうか。著者は次のようにのべています。

「人は弱いものです。僕も、弱い自分に負けそうになってしまいます。今日は負けゲームだから手を抜いてしまおうかな。トレーニングを休んでしまおうかな。素振りを休んで、遊びに行ってしまおうかな。そう思う日はあります。そんなとき僕のプレーを励みにしてくれる人のことを考えます。そうすると力が湧いてきます。もうひとふんばりできる気がします。全力プレーを続けることで、この世でもっともコントロール可不可能な「人の心」を動かしたいと思います。「松井も頑張っているんだから」と」

“弱さ”はこれほどの結果を残した人でさえもつ人間共通の課題。しかし克服できるのは、ほんのわずかな人だけなのかもしれません。克服の連続が正の相乗を作り未踏の結果を残すのだと思います。しかし克服=努力の才能は誰でも持っているのだと思います。もうひとつ誰にでもある怠惰の心が努力の心を負かしてしまうだけなのだと思っています。
自分に置き換えると、少しのことさえ“努力をした”と感じてしまうのだと思います。これは過去の自分がつくってきたことですから、変えることはできません。そうであるなら、いまを検証し起点とし進む他に方法はないのだと思います。怠惰に勝ついがいにないのだと感じています。

 “ゴールを見据え、日々自己を磨く”目の前の仕事に全力で取り組むことのほか成長のすべはないのだと思っています。色々なことを教えられた一冊でした。

 

選ぶ力    五木寛之

On 2013年3月20日, in life Style, by admin

選ぶ力    五木寛之

選ぶ力 (文春新書 886)

30数年前、著者の文庫本との出会いが読書好きへのきっかけでした。中学の頃、神保町の古書店を回り作品集を買いあさりました。当時の私は著者のお歳など考えたこともなかったように思いますが、数年前いわゆる中高年の生き方を仏教から導いく作品を執筆されているということを知人から教えられ、この時折読むようにしております。50年に渡り一線で書き続ける著者の知からにじみ出る人生観は数多くのことを感じさせます。本書もそんな一冊です。ここでは3章「運命を選ぶ」をご紹介したいと思います。

“生まれたときから運命が定まっている”あまりにも運が悪いことが続くとそう思ってしまう人もいるのかもしれない。生まれてくる環境や親を選ぶことはできない。資産や考え方がなんであれそれを受け入れるほかない。幼年期の親の教育や考え方に左右され一生過ごす人もいるだろう。だが同じ親から教育を受けた兄弟でも人生は違う。そうであるなら、環境解釈によって結果が変わってくると考えられないだろうか。少々飛躍をするのだが「選ぶ力」とは考え方を選択する“力”と言えないだろうか。いつくもの選択と行動を繰り返した結果が「いま このとき」なのだ。

こうした連続について次のように著者は述べています。「たとえばプロ野球のイチローでもいいが、すぐれた打率をあげたとする。その成績は、少年時代からの習練の結果であり、創りあげられた肉体と技術とスピリットにもとづく。….こう考えると「今を生きる」ということが、時間のなかで過去と未来に挟み撃ちされていることに気づかないわけにはいかない。さらに問題は、私個人の過去だけでなく、私たちの両親、民族、人類の過去までを引きずっているということだ」

国家債務のような社会的な過去からの“ひきずり”は逃げることはできない。可能なのは、それでも自分にとって、プラスに“転換”する方法を考え、実践するほかにはない。自分の過去もマイナスな要素は内省し、今後に活かしたい。“プラス=ポジティブシンキングとアクション”これが過去と未来に挟み撃ちされた刹那な生き方なのだと思う。思考と行動の“選び方”が未来を決定づける。「..過去は現在を支えると同時に未来を規定する」とワンセンテンスで著者は述べている。

常々思うのですが、目の前のことを必死にやり遂げる。やらない理由は探さずにただただやる。これが“良い未来”を創るのだと思います。いまの与えられた条件のなかで目的、目標に如何に紐付けるか。紐付けた思考と行動を選択し実践できるか。苦しくとも続けていれば「見えざる手」が差し出されるのではないでしょうか。

 

生き方  稲盛和夫

On 2013年3月18日, in life Style, by admin

生き方  稲盛和夫

生き方―人間として一番大切なこと

学ぶことが多い一冊だった。これまでも著者の本やCDから数多くのの学びを得てきたが“渾身の書”ではないだろうか。“生きるとは成長することにある”に違いないと改めて感じる。この数年間“幸福”とはなにか、何のために生きるのか、何を追い求めるのかを随分と考えてきました。その頃、人誰でも生まれた瞬間から寿命が短くなるわけですが、ロスタイムの前に生きる使命を果たしたいと考えるようになってきました。
著者はプロローグで「..“この世へ何をしにきたのか”と問われたら、私は迷いもてらいもなく、生まれたときより少しでもましな人間になる、すなわちわずかなりとも美しく崇高な魂を持って死んでいくためだと答えます」と述べています。思考と結果は、時間差はあるものの一致すると思っています。崇高な思考と行動によって生み出せられる崇高な魂。崇高な思考だけが “幸福”へ近づけ唯一に方法なのだと改めて気づかされました。
こうした思考を磨くにはどうしたらよいのか。答えは“日々の地味な仕事に真剣に向き合い、実績を積み重ねなければ成功はありえません。偉大な成果は堅実な努力の集積にほかならないのです”この言葉にあるのだと思います。愚直に実行する、懸命な努力の連続だけが体得を許されるのでしょう。

実行をとかく他人と比べたり、勝敗で価値を決定づけようとしますが、過去の自分自身と比べることが大切なのだと思います。しかしこれは一定の水準を超えた人にだけ許されることではないかと最近感じています。レベル1が3にあがれば3倍ですが、10段階レベルの3では困り者です。これでは努力したことにならないのでは思ったのです。尊敬する人の本やブログなどから行動基準を感じ取り、それを自己の文脈に落とすことが必要なのだと痛感しています。こんなところでもベンチマークは重要なのだと思います。

こうした行動基準のもと、利他の心で“魂を磨く”のですが、その本質な行動基準は「因果応報の法則」にあるのではないかと本書から読み解きました。「因果応報とは…..つまり、よいことをすればよい結果が生じ、悪いことをすれば悪い結果が生まれる。善因は善果を生み、悪因は悪果を生むという、原因と結果をまっすぐに単純明快なことです」著者はこの因果応報の原理原則で生き結果を出している。命ある限り懸命に善因を尽くし日々生き、魂を磨くことがわが人生の指針となるのだと思います。

本書はあまりに多くの教示がありとても一度では修得することができません。日に数頁でも繰り返し読み続け修得に近づきたいと思います。本書との出会いに心から感謝します。

 

目標達成の技術  青木仁志

On 2013年3月15日, in life Style, by admin

目標達成の技術

目標達成の技術  青木仁志

“目標達成は技術”というのが先生の主張です。目標が大きく遠ければ遠いほど、強い心を必要とされる。強い心さえ本書を元にすれば作れるというのが著者の主張だと感じながら拝読しました。自己啓発を語る本は、ところ狭しと書店に並んでいます。しかし受験参考書と同じで、数多くの参考書を購入するよりも、気に入った一冊を選んで実践する。ここに尽きるように感じています。さしずめ私の師匠は著者になるのだと思っています。出来が悪くとも日々精進を重ねることで、頂に少しでも近づきたいと思っています。

本書は目標達成の扉、真の目標設定、目標達成の障害、目標達成の原理原則、達成計画の立案、信念の力、自分との契約といった7章で構成されています。各章の中身は濃く、再読すればするほど気づきを得られるのだと思います。述べられていることを自分なりに咀嚼し考察し実践へ落とし込む。できなければ再読し更に深め実践し自己管理をする。その根底にあるのは“何を選択し求めるか”ここが目標達成のスタートだと述べています。
著者は次のように述べています。

「…人生理念はあらゆる物事を判断し、選択する羅針盤になります。自分の最も大切にする価値観を明確にすることで、広大な世界、有限な人生の中で戦略的に自分を活かすことができるのです」

指針さえ明確であれば、日々の実践は少なからず前進しているのでは無いでしょうか。“行動と指針の一致”これに尽きるのだと思います。楽とは縁遠い世界だと思います。順風満帆に人生を歩んでいるかに見える人の轍も、数多くの出来事を乗り越えています。乗り越えることが自信へとつながりもっと高い頂を越えることも可能にしていくのではないでしょうか。高い頂を登る過程は、自らの非力さを知ることとなります。家族や友人、ステークホルダーの大切さを一層知り、乗数的に発展するのだと思います。

本書はこのようなエッセンスが細部につまっており、これまでの自分人生を振り返る良い機会を与えてくれと感じております。こうした学びを得、研鑽を続けることで、3歩進んで2歩下がるといった歩みのスピードが1歩下がるように進化し更にはスピードおも加速するのだと思います。実際の行動は、自分をいじめる、ストイック度を増していくこととなります。“ストイックを快楽にする”これが目標達成の基礎なのかも知れません。

 

18分間集中法  菅野仁

On 2013年3月13日, in life Style, by admin

18分間集中法  菅野仁

18分集中法: 時間の「質」を高める (ちくま新書)

 <時間不足の悩みを解決する一冊>

この歳になっていまさら集中法かと言われそうですが、これは私の大きな悩みの一つです。集中力さえ改善すれば時間不足問題の8割程度が片付くのではと思い、平積みの本書を思わず買ってしまいました。私の場合稼働時間は午前7時~午後10時を基本としています。よく寝るので睡眠も6時間オーバー。しかし6時間を下回ると日中どうもフル稼働でないように感じています。まず稼働時間15時間の効率と質をアップし時間不足の解決をしたいと思っています。著者は社会学の大学教授。集中力など十分に備わっているように思いますが、どうもそうではないらしい。高いレベルでのことかもしれませんが、読んでいくと、私も使えそうです。

誰でも24時間100%の集中力を維持するのは難しいと思います。以前から“集中力が切れる 集中できない”のは果たしどんなときかを自分なりに検証してきました。そのひとつに“難しい本”の読書があげられます。こんなときはワンセンテンス、さらには少しでも意味に不安があれば徹底して意味を調べます。イヤになるほど時間がかかるのですが何とか集中力は維持できるように感じています。もうひとつがなんとなく“やる気”がしないので先延ばしにしている仕事や勉強です。著者はこんなときに18分間収集法を進めています。「そんな手間のかかる仕事ではないはずなのに、どうも気乗りせず手をつけないであっという間に数日経ってしまうなんてこともあるのではないでしょうか。「初頭努力」によって作業効率が上がるというのは、あくまで「始め」の合図で集中力を発揮できるような環境や意欲が前提です。ですから私たちが実際抱え込んでいる本当の問題は「どうやったらそうした環境や意欲を整えられるのか」といったことになるのです」

そこで著者は、自らさまざまな実験を繰り返し“18分ならできる”という結論を導き足したのです。本書には課題解決の背景やバイオリズムの問題などさまざまな肉付けがしてありますが、作業は単純で“18分をワンセットとして休憩を挟みながら繰り返す”これにすぎません。本書に出会う以前、私もI phoneのタイマーを使って30分集中法を実践していました。結果としていつの間にかやめており、新たな気持で今回取り組みました。まずは環境を整えることあら“TANITAタイマーを購入”。すべての時間ではありませんが、朝出勤してから帰社まで18分軸で行動しています。もう2ヶ月になりますが、私は“効果有り”と評価しています。30分よりも効果的だと思います。1時間も18分×3で捉えていますのでネットを見ていた、フェイスブックやメールを無駄にチェックしていたということが少なくなります。また18分を単位としているので数多くのことに手を付けることができるのです。こうしたブログの原稿や雑誌、新聞など短時間の活用で積ん読くがなくなっていきます。しかしもっとも効果が高いのは“時間への意識改革”かも知れません。歩いている時間3分、電車を待つ2分、信号の1分など、どうしても生じる不要な時間。いつの間にか “思考の時間”へと転換していました。時には疲れることもあります。しかし集中できない、効率が悪い、質が低いといったネガティブとは縁が切れ、ポジティブタイムへの転換に成功したように思います。時間に悩んでいる方に是非お勧めしたいと一冊です。

 

日本銀行 デフレの番人 (日経プレミアシリーズ)

日本銀行 デフレの番人   岩田規久男

前回総選挙で自民党は175議席増の294議席である圧倒的支持を得た。デフレから脱するために、あらゆる手法を使っているように見える。経済界への賃上げ要請など労働組合が支持団体にあるかのようだ。この小泉政権以降、補正予算以外の景気対策が目立たなかったことから、能動的に働く姿が新鮮にさえ見える。6月の参議院選挙、圧倒的な議席増、総理や自民党の高支持率、マーケットの動きなど期待値は高く、矢継ぎ早に実行している。どうやら私は天邪鬼らしい。この政策は信頼性に欠け不安を覚える。当然、わたしも景気回復を望む。この不信感は総理の前回の職の辞し方やリーマン・ショックにおける麻生内閣の対処や言動などが根底にはある。こうした心持ちのもとで本書を拝読した。

著者は、どうやら日銀副総裁に就任のようだ。本書執筆時は日銀の金融政策は “円安”環境をつくれない「倒錯」だと述べている。著者の主張をざっくりと記せば“マネタリーベースの増加 → 円安(本書は特に注視しない限り米ドルに対して述べている)→ 予想インフレ率の上昇 → 輸出の増加 というシンプルなメカニズムだ。しかし数年前ガソリン価格が上昇したとき、産業の輸送問題だけでなく、漁師が漁に出られない、広がりを見せた薪ストーブなどさまざまな問題を引き起こした。国内をひっくり返すような問題となり、民主党は”ガソリン値下げ隊“などという運動を行っていたように記憶している。株価上昇で高額商品を購入するような裕福層ではなく、円安 → 電気・ガソリン価格の上昇 → 節約という現代の中間層は、ただただ財布の紐がきつくなるのではないだろうか。またGDPがあがり雇用もアップするという。しかし正社員の数がどこまで上昇するだろうか。いろいろな数値の出し方はあるが、新卒の80%は採用されている。問題なのは30代後半からだろう。失礼を承知で述べれば卒業後15年間、果たしてキャリアを積んできたのだろうか。それでは無いように感じている。個々人が能力開発をしなければ生き残れないという意識改善が最も必要なのでないか。ハローワークでの数ヶ月の学びがとても就職に役立つとは考えられない。シャープやパナソニック、SONYなど電機業界は厳しい局面を迎えている。円高がこの一因にあることは間違いない。だが産業構造の転換期であり求められるのはイノベーションである。円安によって雇用増などとても考えられない。
金利上昇リスク、プライマリー・バランスの一層の悪化、→国の格付けの低下 → 銀行格付けの低下 → 自主再生不能 というシナリオも数多くの学者が論じている。このリスク・ヘッジを早々に論じて欲しい。しかし国会での追求はまったくなされていない。還元すれば責任放棄のように感じてならない。

やはり著者や浜田宏一エール大学名誉教授らの主張にあまりにも偏っている。政治家は職を辞すれば責任を取ったことになる。そもそも学者の方々に責任などなく、前提条件の違いや環境の変化を前提にすれば学者としても問題にはならないように感じる。結論として“リスクは国民が背負う”。社会保障費や国債の弁済は国民が負担をする。規制緩和などによって国力を上げることを軸とし日銀の問題は外せない名脇役程度にしてほしいと思う。

 

プロフェッショナルの習慣力    森本 貴義

プロフェッショナルの習慣力 トップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密 (ソフトバンク新書)

「プロフェッショナルの習慣力」副題にはトップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密とある。本書を読んでいる途中から、早速今日から何が実践可能かと考えてしまう。アスリートの成功要因を分析した著書は多数ある。その中には“思考の枠組み”を対象としたものも多い。本書は自らの体験、成功事例、失敗事例が俯瞰して論じられておりとても興味深く読むことができた。

 著者はオリックスブルーウェーブ、シアトル・マリナーズでアスレティックトレーナーを行い、イチローをはじめ数多くの一流選手に関わっている。その成功者に共通するのが「ルーティン力」だという。ルーティンとは“習慣化”を指す。尊敬するアチーブメントの青木先生も習慣化を成功の秘訣にあげている。イチローのルーティン凄さは色々なところで語られている。食事から睡眠、練習方法や時間、道具を磨く意味、本書にも多数紹介されている。こうした成功事例はあるもののルーティンの価値とはなにか。ひとことで言えば勝ちパターンの習慣化ではないかと思う。ルーティンを継続力することによって自信を植え付ける。その日の自分を確認し、向き合い、最も良い状態に近づけるために確認をする。この習慣を育みが成功の秘訣ではないか。「新たな行動を起こし一定の結果が出ると、その情報が脳の前頭葉と呼ばれる場所に集まり、達成感を感じます。その達成感が脳神経をさらに刺激し、次の行動を生むと言われています。このようにひとつの行動が達成感につながり、つぎの行動を生みだすことで、行動が習慣化されていきます。…人間は怠ける生き物と言われています。だからこそ小さな目標を達成するための習慣を日常に埋め込むことは脳の習性を活かすうえでもとても効率的です」と本書は述べている。脳科学者である茂木健一郎氏もこうしたことを論じられています。

 成功要因はさまざまです。しかしながら継続力がなくして成功はないのではないでしょうか。“ルーティン、習慣化”とはどのほどの年月を指すのだろう。残念ながら本書にはそれは論じられていません。3日、90日、3年という時間軸がある。前述の青木先生は3年あれば相当のことができるという。そうであるなら10年、15年、20年と継続したならどんなに素晴らしい結果が残せるのだろうか。心を磨く修行の領域であることは間違いありません。たとえば本書ではイチローの事例を次のように紹介しています。「…しかし彼も人間です。体がだるい、気分が乗らない日もあるでしょう。でも彼は気持ちに流されることなく、自分がやること決めた練習を黙々と実行してきました。..毎日の練習こそ自信の源なのです。彼には、もともと野球の才能があったのかもしれません。しかし、それ以上にルーティンを続ける「努力」をしています。努力が彼を成功へ導いていることは間違いないと思います」

“努力が成功へ導く”清々しいこのひとことがすべてを言い表しているのだと思います。ここに成功の因果があるのではないでしょうか。いまの能力は過去の自分の行為の結果に過ぎないと思います。過去から磨き続けたなら輝かしい能力を持っているはずです。しかしあまり磨いていなかったなら、結果の前に能力を磨くことが必要なのだと思っています。恥ずかしいことに私は後者でありますが、ルーティンの魔法の手に導かれながら進んで行こう、そう思わせられる一冊でした。