プロフェッショナルの習慣力    森本 貴義

プロフェッショナルの習慣力 トップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密 (ソフトバンク新書)

「プロフェッショナルの習慣力」副題にはトップアスリートが実践する「ルーティン」の秘密とある。本書を読んでいる途中から、早速今日から何が実践可能かと考えてしまう。アスリートの成功要因を分析した著書は多数ある。その中には“思考の枠組み”を対象としたものも多い。本書は自らの体験、成功事例、失敗事例が俯瞰して論じられておりとても興味深く読むことができた。

 著者はオリックスブルーウェーブ、シアトル・マリナーズでアスレティックトレーナーを行い、イチローをはじめ数多くの一流選手に関わっている。その成功者に共通するのが「ルーティン力」だという。ルーティンとは“習慣化”を指す。尊敬するアチーブメントの青木先生も習慣化を成功の秘訣にあげている。イチローのルーティン凄さは色々なところで語られている。食事から睡眠、練習方法や時間、道具を磨く意味、本書にも多数紹介されている。こうした成功事例はあるもののルーティンの価値とはなにか。ひとことで言えば勝ちパターンの習慣化ではないかと思う。ルーティンを継続力することによって自信を植え付ける。その日の自分を確認し、向き合い、最も良い状態に近づけるために確認をする。この習慣を育みが成功の秘訣ではないか。「新たな行動を起こし一定の結果が出ると、その情報が脳の前頭葉と呼ばれる場所に集まり、達成感を感じます。その達成感が脳神経をさらに刺激し、次の行動を生むと言われています。このようにひとつの行動が達成感につながり、つぎの行動を生みだすことで、行動が習慣化されていきます。…人間は怠ける生き物と言われています。だからこそ小さな目標を達成するための習慣を日常に埋め込むことは脳の習性を活かすうえでもとても効率的です」と本書は述べている。脳科学者である茂木健一郎氏もこうしたことを論じられています。

 成功要因はさまざまです。しかしながら継続力がなくして成功はないのではないでしょうか。“ルーティン、習慣化”とはどのほどの年月を指すのだろう。残念ながら本書にはそれは論じられていません。3日、90日、3年という時間軸がある。前述の青木先生は3年あれば相当のことができるという。そうであるなら10年、15年、20年と継続したならどんなに素晴らしい結果が残せるのだろうか。心を磨く修行の領域であることは間違いありません。たとえば本書ではイチローの事例を次のように紹介しています。「…しかし彼も人間です。体がだるい、気分が乗らない日もあるでしょう。でも彼は気持ちに流されることなく、自分がやること決めた練習を黙々と実行してきました。..毎日の練習こそ自信の源なのです。彼には、もともと野球の才能があったのかもしれません。しかし、それ以上にルーティンを続ける「努力」をしています。努力が彼を成功へ導いていることは間違いないと思います」

“努力が成功へ導く”清々しいこのひとことがすべてを言い表しているのだと思います。ここに成功の因果があるのではないでしょうか。いまの能力は過去の自分の行為の結果に過ぎないと思います。過去から磨き続けたなら輝かしい能力を持っているはずです。しかしあまり磨いていなかったなら、結果の前に能力を磨くことが必要なのだと思っています。恥ずかしいことに私は後者でありますが、ルーティンの魔法の手に導かれながら進んで行こう、そう思わせられる一冊でした。

 

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