10日土曜日、寺島学長のセミナーがあった。資料として財界での会議資料を手元にしたセミナーであった。いま我々はどういう視点で事業を行うべきかを考えるうえで大変参考になった。
事業内容や経営スタイルによるが10年サイトのような長期的視点で経営を行っている企業は少ないだろう。一般的に長短期と2~3年程度を見据えるのではないかと思う。今回のセミナーは1~3年を目安として捉えた。

昨日9月11日で9.11から10年を迎えた。資料ではこの10年の日本と米国の変化を表した数値が取り上げられた。WTI 27.6$ から115$ 対円レート134.9円から76円へ。原油は4倍、円レートは半減である。日本はドルでの買物が半額で買えるようになったということである。この要因はイラク、アフガンといったブッシュの戦争の影響である。資料には「静かに進行するドル基軸通貨体制の終焉」とある。
先般ナイジェリアだっかが、外貨準備の一部をドルから元に変更するというNEWSがあった。この話題もでたのだが、どうやら米国の信用度が著しく下落しているようである。

日本の国として対応は8/31 日経:外交・安保 北岡伸一(東大教授)氏は、日米安保の重要性という質問に対し「米国は防衛予算の削減を強いられており、アジアに相当な影響を及ぼしかねない。細くなっている官民の日米対話のパイプを修復しなければならない。日本の予算も苦しいが、日本版NSC(国家安全保障会議)の設置、武器輸出三原則の緩和、集団的自衛権の見直しなどは財政負担なしにできる」大きな視点ではここに行きつくのかも知れない。また先般、前原政調会長が発した米国での発言とも一致する。

それでは中小企業とどのようなスタンスで経営の舵を取るべきか。誠に悩ましいコトである。国内に留まる、海外進出どちらにおいても海外動向を常にウオッチする必要があることだけは間違いない。人脈拡張、語学、資本など準備が必要な時期に来ていることだけは明らかだ。欧米・アジア圏など俯瞰して考える必要がある。

試練ではあるがチャンスと捉えることが大切なのだと思う。

 

トレランと迷ったが、2時過ぎまで時間があったことから一年ぶりに道志を走った。自分では山中湖を目指す予行演習だと思っている。目標の山中湖は標高1100㍍を登る。予行演習とはいえ目的地まで約450㍍の登りは厳しい。夏の暑さ以上に脚力の問題が重くのしかかってくる。この45日、怠惰な生活と“さよなら”したはず。しかし失った体力を取り戻すには些か時間が足りていない。

コースは中央青のラインを進む。概ね半分が今回のゴールだ。時間は2時間足らずなのだが、この2時間が【登り】だ。時折の下りも登り返しを考えると“もったいない”気分となる。

確かに苦しいが、数回繰り返せば体力や経験から苦しさも緩和されるはず。山と同じで苦しいだけのうちは心から楽しめない。そこを超えることが必要なのだと思う。折しも前日【7つの習慣】訳者であるジェームス・スキナーのセミナーへ出席。あと1%の努力、できないというネガティブな心との戦いについて受講。耳元で囁きを復唱しながら走り続けた。練習を積んで紅葉の時期までに山中湖を目指したい。
厳しくもあったが楽しい1日だった。

 

日本の国境問題  孫崎 享

On 2011年9月9日, in 政治・経済, by admin

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

昨日(9/7)ロシア軍爆撃機が日本を1周した。産経新聞によると「野田首相が福島原発を視察する時間に合わせ、爆撃機が福島沖を飛行。日本列島を完全に1周するのは極めて異例で、北方領土付近では空中給油機も合流し、露骨な挑発の意図が鮮明になった」とある。つい先日も領土問題の本を取り上げたが、すべての人々が問題を意識すべきだと思う。

この尖閣問題以降、幾度も隣国から侵犯を受けている。この政権不安がすべての要因と言ってもよい。本書では国境紛争について次のように位置づけをしている。

「国境紛争は内政の動向と関連する。その時には、この緊張で誰の立場が強くなるか、その人物が結局は緊張を煽っていないか見ることが重要となる。2010年9月尖閣諸島で緊迫した時期は中国では重要な人事の時期であった。10月の党中央委員会第五全体会議の直前である。中国指導部は世代交代を行う重要な時期である。次期リーダーと目される習近平が軍の要職である中央軍事委員会副主席に選出され、国家主席の後継を固めるか否かを決める重要な次期である。8月頃、中国では権力をめぐり内部闘争が緊迫しているという噂が流れた。こうした時期には内政上の闘争を有利に展開されるため、意図的に対外関係を緊張させるグループが出る。歴史的に見れば、多くの国で国境紛争を緊張させることによって国内的基盤を強化しようとする人物が現れる。そして不幸な時には戦争になる」とある。

2012年はロシア、韓国と周辺国トップが選挙を迎える。この重みは年替わりの首相とは明らかに違う。また国家の方針が変わることさえ考えられる。本書は外交官であり防衛大学校教授でもあった著者が日本の安全保障を研究し、戦略を提案している。本来こうした提案の是非を問いたい。しかしいまの「政治」は問題認識すら不十分なのではないか。甚だ残念でならない。また重い危機感を有する。

本書は日本を囲むすべての国境問題を丁寧に解説する。こうした解説を知識を取得することで日々の情報をより深く観察し考察することが可能となる。有意義な一冊だと思う

 

「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書)>

著者は対ドルが50円になると予測している。現職は同社大学大学院ビジネス研究科教授であり論拠を持ってのことである。本書は金本位制、変動相場制など歴史的背景をしっかりと述べており勉強になる。

日々の為替相場のゆくえなど知る由もないが、中期的には米国、EU、中国のパワーバランス次第ということになるのだろう。著者は、ドルは基軸通貨であることを放棄したと語り「ドルの過大評価が修正される力学はもはや抗いがたい。その流れは日本になにがあろうと、それとは無関係に動き続ける」と述べている。対円ということに絞れば昨今の新聞を見ただけでもドル、ユーロともに高くなっていくであろうことが理解できる。

米国の財政赤字について8/29 「日経:経済教室」にて杉本和行 元財務次官 現職 みずほ総合研究所理事長は「米国の赤字と自由な資本移動の組合せのもとで、世界のマネーは拡大の一途をたどった。欧州連合(EU)でも資本移動の自由化と統一通貨体制が平行して進められた。この結果、米国や欧州の財政赤字は国境を超えてファイナンスしされ、金融と財政が表裏一体の関係になっていく。金融の拡大は財政赤字のファイナンスを容易にし、財政赤字の臨界点を外に向かって押し広げることになった。」と論じている。資本移動における円キャリー、リーマン・ショックの政府による“最後の貸し手”などが現れである。

こうしたことが円高要因の一つではある。しかし国内償却と言われる日本国債も、先物の35%は海外であり、株式市場に至っては65%が海外マネーだ。日本とて国債処理はすでに脆弱なのである。もう一点加えれば“デフレの影響”がある。毎年物価が下がるということは通貨価値があがるということである。実感は難しいが同額の給与で昨年以上モノが買えるということは通貨価値の上昇と捉えることができる。日本に住む個人としては良いことであるが産業はそうではない。

日々のメディアは国内空洞化問題の企業情報を発信している。ここでは詳細を述べないが“購買力平価”ベースにおける中期予測でも円高が見込まれている。他にも雇用、電力、税、社会保証、政治不信etcなど海外選択せざるえない状況もある。多少振り子は揺れるであろうが国外重視の経営判断がとられるだろうと思う。

自己の文脈に落として考えれば、視野に入れて今後を考察しなければならないのだと思う。本書は通貨の歴史的背景が分かる良書である。

 

歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか (朝日新書)

尖閣衝突事件から一年が過ぎた。“衝突”という言葉に違和感を覚えるが新聞などで扱われていることから公式名称なのだろ。事件当時、担当政権であった管内閣の対応はあまりにもひどかった。逮捕拘留、起訴までは良かったが、レアアース輸出規制、フジタ社員拘束により釈放(地検判断)。G20での日本側通訳を付けない温家宝首相との廊下での面談。“ここまで酷いのか”と自らの意識が変わった。
その約1年後“民主党代表選”があった。数人の立候補者があったが領土問題については誰も論じなかったように思う。新聞によれば外交・防衛問題はひと言も論じられなかったとのことである。選挙の5日前、中国公船が“尖閣諸島の領海に侵犯”をしている。産経新聞によると「2隻は領海にはいらないよう求めた海上保安庁巡視船の警告を無視した。それどころか艦橋に設けた電光掲示板で【(尖閣諸島の)魚釣島その他周辺諸島は中国固有の領土だ。中国管轄海域で成功な公務を行っている】とテロップを流した。これも今までになく確信犯の証左だった(9.7)」

昨年来中国は幾度も領空を含め侵犯を繰り返している。震災の時でさえ日本はタッチダウンを行っている。“弱みを見せればつけ込まれる”のが領土問題らしい。実際、尖閣問題直後の香港メディアは実行力を持って対応すべき“という論調を発信していたとのことである。”フジタ・社員の拘束:レアアース輸出規制“という事実は、実行力で対応するという歴然とした事実だ。今後も同様の対応をするのだろう。

政治はこうしたことを論点とすべきだと思う。選挙でもそうだがこれだけ問題が勃発している隣国とどう関係構築をするのか明確に主張すべきだ。日米安保を軸になど当然のことだけ述べても意味はない。

こうした事実を踏まえすべての隣接国と領土問題を抱える以上、領土の史実をしっかりと抑えることは日本人としての義務だと思う。また政治は方針と対応を明確に打ち出す必要がある。本書は新書のボリュームでありながら“史実”を抑えられる良書だと思う。一方的でなく反論についても述べている。
当時の田中角栄首相と周恩来首相との会話を抜粋して紹介したい。
【周恩来首相  : 尖閣諸島については、今回は話したくない。今、これを話すのは良くない。石油がでるからから問題になった。石油がでなければ台湾も米国も問題にしない。
この日中国交交渉事に、中国は尖閣諸島について二つのことをあっさりと認める。次の二つであり、これは正直なのである。
1) 尖閣諸島は友好的話し合いのときは持ち出したくない。つまりこれは有効の阻害になるからだ。
2) この地域は石油がでるから問題になる。台湾や米国が関心を持つのはそれゆえだ。しかし自分たちはこれとは違うのだとの主張を行っている。

2の“違う”というのは、発言時期などから問題があると思うが、国家としての主張はそういうことなのだろう。

“毅然と主張する”まずこれが重要なのではないか。経済と混同して考察するべきではない。2004年、中国活動家が尖閣に上陸した。この対応も考える必要があるのかも知れない。最後に双方の主張の弱点を論じているので紹介したい。

【まず日本だが日本政府は固有のというが、1895年の(沖縄県編入)閣議決定の約10年前、日本は領有しようと試みたが、中国領とみて取り下げた経緯がある。加えて、同島は江戸時代、琉球36島に含まれていない。固有という根拠がない。と指摘する。1895年の沖縄県への編入自体に問題があったのではないか披瀝している。一方で村田教授(横浜国立大学)は中国側の主張に基本的な誤りがあるのではと示す。具体的にいえば1968年国連調査で石油資源が取り沙汰される以前には、地図にも載っていない。とその後の姿勢に一貫性がないことを指摘しているのだ。このことで言えば、1960年代の日本の文部省の検定教科書に記載がない】

中国の主張はずさんに感じるが、日本も今後しっかりとした対応が望まれる。

 

不平等社会日本 佐藤俊樹

On 2011年9月6日, in 書評, by admin

不平等社会日本―さよなら総中流 (中公新書)

日本が不平等な社会へ進んでいることを指摘した論文。しかし例えば年収1200万円を境に分けたとする。本書で示す一定の恵まれた水準を除いた人は相当多いと思う。さらに持続的にこの集団にいることは、一定以上の努力をしなければいることはできない。

サラリーマンとしてこの集団に入るには一定偏差値以上の大学に入ることが条件かもしれない。偏差値教育社会はペーパー試験をクリアすれば最高学府に行かれることが粗保証されている。家庭環境との関連が囁かれているが、20歳でこうした状況を認知すればやり直しは可能であろう。厳しいとは思うが【自己責任】というバイアスをかけながら社会を見ても良いのではなだろうか。

著者の考え方を顕著に表している一文がある。
「実際、日本のW雇上2世のなかには、みずからの力によらないという事実にすらまったく気づかない人もいる。郊外のこぎれいな住宅地に生まれ、有名私立小学校から進学校に進み、有名大学を卒業して、大企業の幹部候補生やキャリア官僚になっていくなかにはW雇上(ホワイトカラー・エリート)以外の世界を全く知らない人もいるだろう。平等社会の神話につかったまますべての人が自分と同じように生活していると思い込んでいれば、みんなまったく同じ条件で競争していると考えても不思議でない。けれども、それはW雇上の世界だけしか知ろうとしないということであり、もっと幼稚な自己中心的態度である…親や周囲とぶつかりながら自分の道を選んできた人も少なくない。だが、全体としていえば、そういう危険をはるかに多く抱え込んでいる。団塊の世代というのはそのW雇上2世が主流を占めるようになった、最初の世代なのである。そのなかで従来のエリートというあり方そのものが根本的にかわりつつある」

高校進学までは2世優位性は認められる。大学進学にあたって予備校や塾などの環境も得やすいだろう。しかし著者の働く学者の世界は、こうした2世だからと言って“博士”にはなれないだろし、公務員上級職に合格もしないだろう。2世であっても“努力”をしているからその場に立てるのではないだろうか。

2極化ということが言われて久しいがまず“分岐点”があきらかではない。9月5日「日経・経済教室・大竹文雄(大阪大学教授)」は“【格差は拡大している】OECD は貧困に陥るのは個人の怠惰ややる気の欠如が原因か、社会が公正でない点に起因するのかとを尋ねた(90年代の世界調査を引用)「個人の怠惰が原因」と考える人は、欧州では20%以下の国が多いが、日本では約40%存在する。と述べている。このように日本では”個人責任“を問題とする考え方が米国は無論EUよりも強いのである。

本書は論文であり著者は仮設を立証することが使命であるかと思う。しかし社会問題的には自らの立場を認識しその時その場から目標に対しマイルストーンを置くかが問題ではないか。

 


戦略「脳」を鍛える

「コト」は文脈を通じ解釈をする。文脈はアーカイブや解釈で捉え方が違う。質のよい豊富なアーカイブを持つ人とそうでない人では、必然的に結果が違う。BCG(ボストン・コンサルティング)レベルになるそのレベルに差はないらしい。

「事象の捉え方」=「目利き力」がポイントとのことである。 著者によると「経営の場でも、プロ同士が全力で戦う市場においては、戦略論という定石を当然知ったうえで、新たな戦い方をつくり上げる。「プラスアルファの能力」を身につけた者だけが、自らを差別化し、競争優位に立つことができる。この「プラスアルファの能力」を我々は「インサイトInsight」と呼んでいる。インサイトという言葉は、日本語にすると「直観」あるいは「洞察力」という言葉になりややニュアンスが異なってしまう。BCG流の「インサイト」をあえて意訳するなら「勝てる戦略の構築に必要な“頭の使い方“ならびにその結果として得られる”ユニークな視座“」と言う感じになろうか」

ここでのポイントは2つある。まず基本的な経営知識を習得すること。次に“勝てる頭脳”を身につけることとある。実際、マイケル・ポーターを始めとした“定石”だけでも相当の量がある。必死に取り組んでも基礎だけで1年以上はかかるだろ。しかし“これはやらなければならないこと”にすぎない。また“やればできること”である。事業成否のポイントが“インサイト・パワー”にあることが本書から読み取れる。

インサイト・パワーのひとつに“スピード”をあげている。戦略Plus、インサイトの思考過程は定石を加工、応用し仮設を立てる。仮設をシュミレーションし有効性を検証する。これをフルスピードで幾度も繰り返しその有効性を高めなければならない。このスピードが重要なポイントだと本書は述べている。
中小企業の視点では“スピード以上にリスクの捉え方”が重要だと私は考える。リスクは経済的リスクだけでない。時間、組織、取引先環境、など多用である。失敗が重ねれば組織からの信頼度も喪失するだろう。その痛みは大企業と比率が違うと思う。常に多面的に捉える必要があると思う。

本書は“戦略の思考法”として良い本である。常に頭の引出しに入れて置きたいものだ。
実は本書を手にする少し前から研究ノート(定石)の再構築を始めていたところだった。併せて「インサイト・パワー」を身に付けなくてはと感じている。

 

起業家のための社長学―第一部 戦略「理念経営」編

経営者にはいくつかのケースがある。出世して経営者になるケース、家業を継ぐケース、ゼロから起業をするケースである。それぞれに悩み、苦しみ、楽しみはあるかと思うが、リスクが最も高いのが“ゼロからの起業”だと思う。本書はそんなリスクを少しでも下げるための方法を述べている。

このブログでも【経営理念】が企業の根幹を成すことを幾度か述べてきた。理念のブレは振り子のようにリスクを高める。利益に左右される、他の事業が良く見える、リスクを取れないなどあらゆる角度からリスクを高める。本書はその点について次のように述べている。

「企業経営には変わらないものと、変わってよいものがある。変わらないのは企業理念である。企業理念は起業家自身の“立ち位置”である。立ち位置をつくり上げてから、将来あるべき姿(ビジョン)を設定していく。その後、ビジョンを具現化するための長期目標、中期目標、短期目標を定める。そこから目標をどのように具現化するというプランニング、そしてそのプランニングを日々実践するためのオペレーション管理をしていく。これが経営の要諦である」

理念は信念にも近い。自己理念であれば「生き方」であるのだから経営理念は「企業の生き方」に通ずる。本来ブレてはいけないものだが、人はそれほど強くなく時として揺れる。そのブレを止め立ち位置に戻るには、チェックシートの作成やこうした本を読むことが効果的だと思う。これは私の方法だが、自己を矯正する方法は自分なりに生み出す他ないように思う。

本書次に“習慣”の重要性を説いている。“願望は強いが意思は弱い”という、自然な行為を変えるには“習慣・無意識”のレベルに達することが【成功】へのパスと述べている。反論などできようはずもなく、ただこの境地をめざす他にないのだと思う。自らの行動を自己の理念・価値観というフィルターを通して行動する。そうすることで一定の原理原則が生まれる。それは思いを遂げる方向へ歩むことになる。結果、理念を基にした目標へ近づくこととなる。

いまだ本書習得の端緒にもつかない。時々読むことは一歩近づくことになるのではないかと思っている。