「通貨」を知れば世界が読める (PHPビジネス新書)>

著者は対ドルが50円になると予測している。現職は同社大学大学院ビジネス研究科教授であり論拠を持ってのことである。本書は金本位制、変動相場制など歴史的背景をしっかりと述べており勉強になる。

日々の為替相場のゆくえなど知る由もないが、中期的には米国、EU、中国のパワーバランス次第ということになるのだろう。著者は、ドルは基軸通貨であることを放棄したと語り「ドルの過大評価が修正される力学はもはや抗いがたい。その流れは日本になにがあろうと、それとは無関係に動き続ける」と述べている。対円ということに絞れば昨今の新聞を見ただけでもドル、ユーロともに高くなっていくであろうことが理解できる。

米国の財政赤字について8/29 「日経:経済教室」にて杉本和行 元財務次官 現職 みずほ総合研究所理事長は「米国の赤字と自由な資本移動の組合せのもとで、世界のマネーは拡大の一途をたどった。欧州連合(EU)でも資本移動の自由化と統一通貨体制が平行して進められた。この結果、米国や欧州の財政赤字は国境を超えてファイナンスしされ、金融と財政が表裏一体の関係になっていく。金融の拡大は財政赤字のファイナンスを容易にし、財政赤字の臨界点を外に向かって押し広げることになった。」と論じている。資本移動における円キャリー、リーマン・ショックの政府による“最後の貸し手”などが現れである。

こうしたことが円高要因の一つではある。しかし国内償却と言われる日本国債も、先物の35%は海外であり、株式市場に至っては65%が海外マネーだ。日本とて国債処理はすでに脆弱なのである。もう一点加えれば“デフレの影響”がある。毎年物価が下がるということは通貨価値があがるということである。実感は難しいが同額の給与で昨年以上モノが買えるということは通貨価値の上昇と捉えることができる。日本に住む個人としては良いことであるが産業はそうではない。

日々のメディアは国内空洞化問題の企業情報を発信している。ここでは詳細を述べないが“購買力平価”ベースにおける中期予測でも円高が見込まれている。他にも雇用、電力、税、社会保証、政治不信etcなど海外選択せざるえない状況もある。多少振り子は揺れるであろうが国外重視の経営判断がとられるだろうと思う。

自己の文脈に落として考えれば、視野に入れて今後を考察しなければならないのだと思う。本書は通貨の歴史的背景が分かる良書である。

 

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>