歴史でたどる領土問題の真実 中韓露にどこまで言えるのか (朝日新書)

尖閣衝突事件から一年が過ぎた。“衝突”という言葉に違和感を覚えるが新聞などで扱われていることから公式名称なのだろ。事件当時、担当政権であった管内閣の対応はあまりにもひどかった。逮捕拘留、起訴までは良かったが、レアアース輸出規制、フジタ社員拘束により釈放(地検判断)。G20での日本側通訳を付けない温家宝首相との廊下での面談。“ここまで酷いのか”と自らの意識が変わった。
その約1年後“民主党代表選”があった。数人の立候補者があったが領土問題については誰も論じなかったように思う。新聞によれば外交・防衛問題はひと言も論じられなかったとのことである。選挙の5日前、中国公船が“尖閣諸島の領海に侵犯”をしている。産経新聞によると「2隻は領海にはいらないよう求めた海上保安庁巡視船の警告を無視した。それどころか艦橋に設けた電光掲示板で【(尖閣諸島の)魚釣島その他周辺諸島は中国固有の領土だ。中国管轄海域で成功な公務を行っている】とテロップを流した。これも今までになく確信犯の証左だった(9.7)」

昨年来中国は幾度も領空を含め侵犯を繰り返している。震災の時でさえ日本はタッチダウンを行っている。“弱みを見せればつけ込まれる”のが領土問題らしい。実際、尖閣問題直後の香港メディアは実行力を持って対応すべき“という論調を発信していたとのことである。”フジタ・社員の拘束:レアアース輸出規制“という事実は、実行力で対応するという歴然とした事実だ。今後も同様の対応をするのだろう。

政治はこうしたことを論点とすべきだと思う。選挙でもそうだがこれだけ問題が勃発している隣国とどう関係構築をするのか明確に主張すべきだ。日米安保を軸になど当然のことだけ述べても意味はない。

こうした事実を踏まえすべての隣接国と領土問題を抱える以上、領土の史実をしっかりと抑えることは日本人としての義務だと思う。また政治は方針と対応を明確に打ち出す必要がある。本書は新書のボリュームでありながら“史実”を抑えられる良書だと思う。一方的でなく反論についても述べている。
当時の田中角栄首相と周恩来首相との会話を抜粋して紹介したい。
【周恩来首相  : 尖閣諸島については、今回は話したくない。今、これを話すのは良くない。石油がでるからから問題になった。石油がでなければ台湾も米国も問題にしない。
この日中国交交渉事に、中国は尖閣諸島について二つのことをあっさりと認める。次の二つであり、これは正直なのである。
1) 尖閣諸島は友好的話し合いのときは持ち出したくない。つまりこれは有効の阻害になるからだ。
2) この地域は石油がでるから問題になる。台湾や米国が関心を持つのはそれゆえだ。しかし自分たちはこれとは違うのだとの主張を行っている。

2の“違う”というのは、発言時期などから問題があると思うが、国家としての主張はそういうことなのだろう。

“毅然と主張する”まずこれが重要なのではないか。経済と混同して考察するべきではない。2004年、中国活動家が尖閣に上陸した。この対応も考える必要があるのかも知れない。最後に双方の主張の弱点を論じているので紹介したい。

【まず日本だが日本政府は固有のというが、1895年の(沖縄県編入)閣議決定の約10年前、日本は領有しようと試みたが、中国領とみて取り下げた経緯がある。加えて、同島は江戸時代、琉球36島に含まれていない。固有という根拠がない。と指摘する。1895年の沖縄県への編入自体に問題があったのではないか披瀝している。一方で村田教授(横浜国立大学)は中国側の主張に基本的な誤りがあるのではと示す。具体的にいえば1968年国連調査で石油資源が取り沙汰される以前には、地図にも載っていない。とその後の姿勢に一貫性がないことを指摘しているのだ。このことで言えば、1960年代の日本の文部省の検定教科書に記載がない】

中国の主張はずさんに感じるが、日本も今後しっかりとした対応が望まれる。

 

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