日本の国境問題  孫崎 享

On 2011年9月9日, in 政治・経済, by admin

日本の国境問題 尖閣・竹島・北方領土 (ちくま新書 905)

昨日(9/7)ロシア軍爆撃機が日本を1周した。産経新聞によると「野田首相が福島原発を視察する時間に合わせ、爆撃機が福島沖を飛行。日本列島を完全に1周するのは極めて異例で、北方領土付近では空中給油機も合流し、露骨な挑発の意図が鮮明になった」とある。つい先日も領土問題の本を取り上げたが、すべての人々が問題を意識すべきだと思う。

この尖閣問題以降、幾度も隣国から侵犯を受けている。この政権不安がすべての要因と言ってもよい。本書では国境紛争について次のように位置づけをしている。

「国境紛争は内政の動向と関連する。その時には、この緊張で誰の立場が強くなるか、その人物が結局は緊張を煽っていないか見ることが重要となる。2010年9月尖閣諸島で緊迫した時期は中国では重要な人事の時期であった。10月の党中央委員会第五全体会議の直前である。中国指導部は世代交代を行う重要な時期である。次期リーダーと目される習近平が軍の要職である中央軍事委員会副主席に選出され、国家主席の後継を固めるか否かを決める重要な次期である。8月頃、中国では権力をめぐり内部闘争が緊迫しているという噂が流れた。こうした時期には内政上の闘争を有利に展開されるため、意図的に対外関係を緊張させるグループが出る。歴史的に見れば、多くの国で国境紛争を緊張させることによって国内的基盤を強化しようとする人物が現れる。そして不幸な時には戦争になる」とある。

2012年はロシア、韓国と周辺国トップが選挙を迎える。この重みは年替わりの首相とは明らかに違う。また国家の方針が変わることさえ考えられる。本書は外交官であり防衛大学校教授でもあった著者が日本の安全保障を研究し、戦略を提案している。本来こうした提案の是非を問いたい。しかしいまの「政治」は問題認識すら不十分なのではないか。甚だ残念でならない。また重い危機感を有する。

本書は日本を囲むすべての国境問題を丁寧に解説する。こうした解説を知識を取得することで日々の情報をより深く観察し考察することが可能となる。有意義な一冊だと思う

 

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