反米の招待  冷泉彰彦

On 2015年5月21日, in 政治・経済, by admin

反米の招待  冷泉彰彦

21世紀の日本最強論 (文春新書)

 TVを始めとしたメデイアへの政治関与。またセミナーなどでは国内メデイアの発信情報は歪んでいるなどとの発言も多い。Newsweekは日本の情報統制は中国並み(http://www.newsweekjapan.jp/newsroom/2010/08/post-139.php)  などの記事もある。
 過日大阪市で市制度の住民投票があった。さまざまな分析がこれからされるだろうが、地域や年齢で2分されたことを間違いないようだ。ざっくりした切り口だが、情報を自ら取得し様々な角度から考察するグループと大衆メデイアから情報を取得して考察するグループに分類をすることができないだろうか。TwitterやFacebookなどでの意見表明を見る限りこうしたことを感じる。

 我々が得られる情報は歴史教科書でさえ一本化していない。様々な歴史事実も解釈が違う。決して改憲への考え方ではないが、これまでもGHQが8日間で現憲法を作ったと言われている。しかし終戦後日本をどうするかについて、終戦以前に十分検討されていたことはその後の対応を見れば明らかである。しかし社会的立場のある方々がTVなどのメデイアで発信すれば事実が作り上げられる。こうなるとなにが真実か見極められなくなるのでないだろうか

 日本は法律が改正され世界との関係構築が変化する可能性がある。日々刻々と変化する中で前記した住民投票のように政治に参加する機会があるのかも知れない。そのときに我々はコンセプトと情報から判断をすることが求められる。
右派と左派の政治概念が違うことは誰でも知っている。しかし右派的思想の中で親米と嫌米に右派が分かれると思われるがどう捉えるべきなのだろうか。
 
 本書は嫌米右派として石原慎太郎を始めとした青嵐会の面々をあげている。実に理解ができる。東京をはじめ都市は焼かれ、原爆を落とされ、戦後統制下に置かれた。だが原爆投下の指令官であるカーチス・ルメイに勲一等旭日大褒章を授与した。
 戦後は財閥解体、公職追放、3Sによる弱体化により國体から遠ざけられ、本書は日本の保守本流は「イデオロギーのニュアンスは希薄であり、極めて現実主義的に日本の成長を促進する」ものと論じる。本書によれば一部にイデオロギーを軸とした方々はいるが、保守≒右派という考えに基づけば嫌米保守ではないようである。我々は何をもって保守と定義すれば良いのだろうか。

 理念より経済が優先されるように感じる日本。豊さ追求は否定しない。だが課題を後世に残すことは許されない。日米同盟を理念無き同盟と述べる。中国との確執、財政問題から日本が自前の軍隊の保持は困難であるとし、米国による安全保障以外は難しいと述べる。それにも関わらず民主党政権は、インド洋供給問題、沖縄基地の県外移転を示し不要な不信感を抱かせた。イデオロギーのつながりがない関係の難しさを感じる。

 米国にとっての日本の価値とはなにか。中台関係問題、北朝鮮、ロシア、南シナ海問題など地政学的価値と2位の半分とはいえ世界3位のGDPだ。だが「日米関係の疲労感」の存在を示唆する。長期間のデフレ、膨らむ国家債務、労働者レベルダウンなど日本の国力の弱体化は明らかだ。著者は、疲労回復≒経済回復日米関係の継続の要件と示唆する。経済価値が片務関係の条件であることを改めて感じる。

 片務契約の側面には地位協定の問題がある。暴行など問題は沖縄に限らない。逮捕や引渡、裁判の権利が平等とは思えない。だが著者は両国の司法の違いを示唆する。逮捕から判決までの勾留、接見禁止、密室での取り調べなど人権の担保不足が地位協定を難しくしていると述べている。日本側に言い分はあろうが改訂は難しそうだ。

最後までお読み頂きありがとうございました。  藤田

 

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