私は朝日新聞読者だ。また体制側である日本経済新聞の読者でもある。他も新聞も読む事はあるが購読はこの2紙であり概ね目を通すことにしている。朝日新聞読者は左翼。こうした括りをする人もいるがあまり正しいとは思えない。
 右翼、左翼のイデオロギー違いは社会保障制度や労働者支援に軸足を置くか、個人主義を主張するかの違いだ。本来個人主義の主張である自由民主党が経営者に分配を求めるのであるから、こうした主張でないメタファーが求められるのだと思う。

 朝日新聞は左翼なのか。また紙面が左翼的思想で執筆されているのか。この疑問の答えを探すべく本書を拝読した。本書の主張をすべて受け入れなくとも左翼的組織文化が朝日新聞内にないであろうことは伺うことができた。そもそも意思決定に文化が反映されていないからだ。

 組織崩壊による事件が大きく2つ取り上げられている。福島原発の吉田調書と従軍慰安婦強制連行記事の問題である。まず福島原発•吉田調書入手後はピューリッツアー賞が目的あり「所長命令違反 原発撤退」「所員に9割」は目的にそったエッジを効かせた見出しにすぎなかったというからお粗末である。なぜこうした勇み足をおこしたか。原因は出世にあると本書では述べている。また調書提供者が提供者に批判的記事を書かないことを条件に提供したとの意見もあるようだ。

 メデイアは事実に忠実に多様な角度から発信しなければならない。そのうえで評価をうけるべきだ。TVや新聞のような大型のメデイアは自社内に限らず他社と相互牽制する必要があるのではないだろうか。

 本書は組織の観点から発信をしているがどちらかというと個々の記者の責任でなく少数の個人と企業の責任だとしている。これでは自己弁護になるのでないか。本で発表する前に一層の社内改革が求められるのではないか。スポンサー減によるメデイアの減少。2000年頃の銀行のようにならなければよいのだが。

メデイアの実態を知るには手頃な一冊ではないか。

朝日新聞 日本型組織の崩壊 (文春新書)

 

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