東電国有化の罠         町田徹

 大飯原発が再稼働した。計画停電の不自由さを我々は昨年経験した。当社は大阪にコールセンターがあり、計画停電となれば数多くのお客さまにご迷惑を掛ける。再稼働に反対するものの、お客さまに理解を得られるのかと考えてしまう。しかし短期的な是非を問う問題ではない。我々利用者が俯瞰して考察し意思決定する必要がある。メディア報道に侵されることなく自ら情報を取って考えなければならない。本書を含め5冊ほど原発問題の本を読んだ。そうして昨日再稼働を迎えたのだが、政府は果たして当事者として責任を持って判断選択したのだろうか。消費税だぶらせずにこの問題を多様な角度から議論して欲しかった。いつかきた道を戻ることにならないことを願いたい。

東京電力の福島原子力事故調査委員会の報告では『想定外の津波と備えが不十分だったことが事故の根本的な原因と結論づけた』(日経/6/21)想定内と感じた方が多いのではないか。そもそも東電側は原子力損害賠償法にもとづく免責条項を主張しているのだから当然とも言える(異常に巨大な天災地変または社会的動乱によって生じたものがあるときは、この限りではない という条文)本書では「東電は様々な非公式の席で“裁判をやれば、第三条第一項の面積規定が認められる可能性がある。その権利を放棄したわけではない”と主張している」との言質を得ていると記している。被害者感情を無視したものではあることは間違いない。しかし国が存続を認めた。存続している器のこの発言は予測がつく。

 東電を事故前と何ら変わらない組織のまま存続させたのか。国策という姿が本書から見え隠れする。著者は事故直後の融資に際し東電は潰さないと言外しているという。またいまだ債務超過にもならず上場しているのは“賠償の勘案や福島原発の処理費用を決算が計上されていない”からだ。処理費用はシンクタンクによっては20兆に上るという。しかし監査法人は重要なポイントをクリアしていることを示す「無限定適正意見」の評価を与えている。監査は個人責任が問われる。破綻リスクを示す文言をつけているが、この評価をした監査人の責任は問われないのか。助成金や融資を含めた間接金融システムの評価の元がこれで良いはずはない。

はたして政治、官僚、東電は三位一体となって改革をしようとしているのだろうか。しばらく検討を重ねたい。

 

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