政権交代とは何だったのか (岩波新書)

自民党が新進党と割れた目的は政権交代可能な二大政党制を作ることにあった。それから20年ようやく近づくことができた。完成などはないがあるべき姿とはいまだ程遠い。それはどちらの政党にも言えることだろう。北海道大学教授の著者は学術的視点を加え二大政党制の必要性を論じてきた。

民主党には綱領がない。それは経済社、社会保障制度、外交・防衛などの指針が無いことにつながる。経営も理念なき企業が短命であることは明らかだ。理念なき政党について著者はつぎのように述べている。

「長年この党を応援してきた私が言うのも愚かな話だが、政権交代に期待を集めた民意の大きなエネルギーを実体的な政策転換につなぐことができなかったのは民主党の「方便政党(てだて)」という限界があった。….民主党は非自民の政治家が小選挙区を生き残るためのいわば方便であった。“自民党ではだめ”という否定形の命題を共有しさえすれば、異なった思想を持つ政治家も民主党で共存できた。この党に綱領がないということはしばしば批判されたが「何はともあれ政権交代」という目標以上の綱領をこの党は必要としなかった」

TPPや増税を伴う社会保障制度の問題は自民党も含めて問題意識は共通しているはずだ。極めて緊急性と重要性が高い政策だ。それにも関わらず “選挙インセンティブ”がこうした行動を取らせる。これを抑えるのは理念しかない。政治家が職業になってしまっているのだろう。投票者が信託したい政党や政治家がいない状態が続いているようにも感じる。角度を変えると民主主義の弱点があらわとなったと言えないだろうか。問われるのは“いまの政党がどう変化すること”なのだと考える。平和や安全のビジョンをまず示して欲しいと思う。

平等についても同様である。最近は当然のごとく“平等・再分配”という言葉が使われる。極端な例が1%の人が得る富の再分配である。大多数の1%は相続で富を得たのではない。幼い頃から学び続けリスクを取り今に至っているのではないのか。20:80のパレート最適で考えても同様だと思う。フラット化する世界では国外へ移転することは容易だ。“20%が日本と海外の選択をする時代”そんなリスクも考えるべきではないか。

本書は政党のあるべき姿を示している。このままではソブリン危機が日増しに近づく。一日も早く正常な姿になって欲しいと思う。

 

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