「東日本大地震が内包している意味」・「エネルギー・環境問題のパランダイム転換を再考する」このテーマを元に寺島実郎学長が語った。あとわずかで震災から1年になる。被災地から遠ければ人の記憶も少しずつ薄れていく。問題は多くゆっくりではあるが新たな生活に舵がきられつつあると思う。だが東京電力の問題はこれからが本番を迎える。

この講義を聴講するまでは岡本行夫氏のセミナー評でも書いたように、政府が原発保証会社の存在となるのはどうかと考えていた。しかしそれはまったくの誤りであった。10兆に及ぶと言われている債務を民間企業が背負い存続などできるはずはない。事業計画は成り立たない。りそな方式・JAL方式など方法論を問うてもこの巨大な債務を弁済できないのである。現実的に考えられるのは、賠償は政府が行い、東京電力は解体し新会社化ではないだろうか。分離方式などはその次の課題となる。だが東京電力でさえ賠償が不可能なのである。すべての原発は国家が運営するということになる。

日本は抜本的にエネルギー政策を考える必要に狭まれている。サスティナブルな成長戦略に深く関わるエネルギー政策を描くには高い見識が望まれる。国内でも限られた人物になるのだろう。エネルギー調査会がその役割をするのかも知れない。こうしたことを踏まえ寺島学長はレジュメには「非核国として原子力を平和目的だけに利用している国の代表国として自覚」を持つことが必要だと述べている。さらにベストミックス試案として原子力の比重を2割程度にした電源供給を提言されている。

その理由は原子力技術の側面、福島原発の経験を世界にシェアすること、化石燃料の問題などをあげておられた。経験のシェアは核問題処理の先頭を日本は走ることになる。IAEAにとっても貴重な国家となることは間違いなく世界に必要な国家となれる。また化石燃料輸入環境は不安定極まりない。一次エネルギーの4割を中東に依存し8割のタンカーがホルムズ海峡を通過する。米国とイランに関係は最も不安定な関係にある。さらには再生エネルギーが短期的に原発の代わりになるとは考えづらい。

長期戦略をフルスピードで考案しなければならない。こうしたことを踏まえ自分なりの考え方をこれからまとめて行きたいと思う。国家としては、まずエネルギー政策を含めた、10年後の全体ビジョンを掲げ国民の合意をとって欲しい。その上で東京電力のあり方を決定して欲しいと思う。

 

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