2022―これから10年、活躍できる人の条件 (PHPビジネス新書)

書店で平積みされていたので購入。ずいぶんと久しぶりの神田昌典だった。だが本書は小説「告白」や短期間で結果を出す販促プランとは違っていた。癌に侵されていたこと、経営が思わしくない時期があったこと、これからの社会の問題解決方、ライフスタイル、事業展開など新書の紙幅では少し足りないのではと思ったりした。

いまの社会やこれからの社会の厳しさはこのブログでもずいぶん紹介してきた。ここではその解決策を起業に求めていることを紹介したい。
会社という器の変化、ビジネスモデルが変化し雇用形態がいま以上に変わるというのが著者の考え方だ。実例としてAppleを取上げてみたい。AppleはiPhoneなど企画・製造・販売するが自社工場を持たない完全なファブレスだ。国外で製造することから販売量が増えれば貿易収支は悪化する。米国内ではあまり雇用を生み出さない。近年日本企業のものづくりや流通も同じ傾向にある。この動きは加速が予測される。さらなる加速と量の拡大は10年後の社会は雇用環境が大きく変える。問題を放置すれば失業者が溢れてしまう。数年前の派遣村が色々な公園に生まれることになるのかも知れない。
著者は失業問題を解決するKFSを起業に求めた。

確かに起業環境は10年前と比べても変わった。レンタルオフィスや携帯電話は充実した。スマートフォンやPC、web環境は比べ物にならない。Facebookなどのコミュニティ、リスティング広告などビジネス環境は大きく変わった。これらは起業の初期投資を大きく下げた。投資の低さはリスクも下げる。起業環境は整いつつある。

問題は何の事業で起業をするかだ。起業コンサルの側面から言えば“文脈の太さ”が重要となる。言葉を変えると“コンセプト創発パワー”とも言える。既存事業でもオリジナルな発想力を加えれば「違う事業」になる。こうした企業は“価格競争”に巻き込まれない。実際には難しいがこんなオリジナルでも良い。

文脈の太さは起業するまでの能力開発による。アーカイブの質と量、気づきのパワー、人脈デバイス。こうしたことの積み重ねが太い文脈を創る。これらに加えて“胆力”が求められる。本書では著者の胆力に触れることができるので後で紹介したい。

アーカイブと気づき(感覚・クリエイティビティ)を著者はこう語る。

「論理的解決策が見つかりそうもない中で、業績を上げていくためには、MBAではなくMCA(マスターオブ・クリエイティブ・マネジメント)が必要だ。ビジネスを管理するだけではなく、多様な人々が触発し合う場を創り、いままでにない価値を想像する能力が求められているのだ」

ワールドカフェのような場創りが想像される。著者の考えを否定するものではない。だが論理思考を徹底的に詰めるまえに感性に頼るとそれは博打に近づく。実際の現場ベースの答えは“教科書”に載っていることが多い。それを実践したのが星野リゾートだ。星野社長はそのうえでクリエイティビティを発揮している。この順序が経営の実践では大切ではないかと考えている。

少し長くなったので次回に繰り越したい。

 

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