論語と算盤 渋沢栄一

On 2011年7月13日, in 書評, 経営者, by admin

現代語訳 論語と算盤 (ちくま新書)

論語と算盤 渋沢栄一  訳 守谷淳 

教養とはこういう書をどれだけ習得したかによるのだと思う。本来青年期に読むべき一冊をいま頃、読んだ自分を恥ずかしく思う。著者はあまりにも有名である。企業人としては、みずほ銀行、アサヒビール、王子製紙と日本の錚々たる企業の創設者である。また本書は経営者のバイブルと言っても良い。

経営においてもっとも重要なのは企業理念だと思う。随所で述べてきたがビジネスモデルをいくら描いても理念がなければ経営をすることは難しい。理念を指針と置換すればまさに論語はそのものだ。ペーパーづくりに夢中なっても成功は難しいのではと思う。
企業や政治の不祥事は主に“お金”にまつわることが多い。経営にお金は無くてはならないものだがお金について本書は次のように語っている

「お金は社会の力をあらわすための大切な道具でもある。お金を大切にするのはもちろん正しいことだが、必要な場合にうまく使っていくのも、それに劣らずよいことなのだ。よく集めて、良く使い、社会を活発にして、経済の成長をうながすことを、心ある人はぜひとも心がけて欲しい。お金の本質を本当に知っている人なら、良くあつめる一方で良く使っていくべきなのだ。よく使うとは、正しく支出することであって、よい事柄に使っていくことを意味する。…お金に対して、無駄に使うのは戒めなければならない。しかし同時に、ケチになることも注視しなければならない。良く集めることを知って、良く使うことを知らないと最後は守銭奴になってしまう..」

“良く使う”とは以外と難しい。個人のケースで考えれば“利他の心”で使うことになるのではないだろうか。家族など身近な人の幸せのために使うこと。我欲で欲しいものを買う前に利他を優先する心が求められるのではないだろうか。企業の文脈に落とせば適正な投資と分配になるのではないかと思う。

本書は国家・社会・企業・個人といった思考で構成されている。自らは最後に考慮するのだ。本来これが“人のあるべき姿”なのだろう。長期に渡って成長を可能にする企業は、こうした思考で経営理念が作られている。これはゆとりがあるからできるのでなく、どうあるべきかを常に考えつづける結果なのだ。
文中には“四十にして惑わず”とある。しかし我を見返せばいまだ迷走が続いている。その理由がここにあるのだと思う。まずは揺るがない志を構築することから始めなければならない。

読み返したい一冊である。

 

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