一橋ビジネスレビュー 59巻1号(2011年SUM.)

一橋ビジネスレビュー59巻1号に発表されて野中名誉教授が「知識経営の最前線」なる論文を発表された。

野中教授は“戦略の究極は”賢慮や実践的知恵、実践知の概念で「何が社会にとって善いことであるか」という共通価値観を持って、その都度の文脈で最善の判断を行う力である“と述べている。

 実際の経営では共通の価値観を持つことが難しい。本書で取上げられたHONDAの“3つの喜び”(創る喜び、売る喜び、買う喜び)などは最も成功した事例だと思う。こうした価値観や理念のもと“衆知経営”を行うことが重要であることを論じている。松下孝之助は「 最高の経営は衆知による経営であり、全員の知恵が経営の上により多く生かされれば生かされるほど、その会社は発展する」と述べている。
またチェンバース(シスコシステムズCEO)は “上から指揮命令する経営から、コラボレーション(協業)とチームワークの経営へと移行する”..チームワークと協業を促進する自律分散リーダーが全世界でつながるコミュニティ型企業の変身は、「衆知経営」の新たな潮流を感じる、チェンバースはその変化を以下のように語ると述べている。そのうえでSNSを使った衆知経営により「もうCEOに頼る必要はない。今では、ミニCEOやミニCOOにように、グループを率いることのできる人材がたくさんいる。アイデアも育てているが、人も育てているのだ。以前なら、私の後継者は2人しかいなかったが、今では500人いる」とまで述べている

野中名誉教授はこうしたことを可能とする、フロシネスの組織化について次のように語った。「実践知の組織化とは「自律分散型」のリーダーシップだ。すなわち組織やそのネットワークのあらゆるレベルで自発的な知識創造が起こることである。これはわれわれが主張した「ミドル・アップ・ダウン」のプロセスによって実現する。トップが大きな理想を示し、ミドルがそのビジョンを具体的なコンセプトや計画に落し込み、現実の文脈に合わせて対話と実践の場を醸成し、組織的に知を生みだす。そのプロセスを通じて、トップだけでなく、全社員がカリスマとなるのである」

フロシネスのリーダーシップ概念を知識創造理論では「実践知」と呼ぶ。ここまで実践知の実例とミドル・アップ・ダウンという日本独特とも言える組織プロセスの理論を紹介した。本文“知識経営の最前線”では“実践知リーダーの能力”などが論じられていく。次回以降本論について紹介していきたい。

 

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