哲学思考トレーニング (ちくま新書 (545))

思考方法の重要性を日々感じている。また思慮が浅いことで誤った判断をしたことも数多い。思慮を深めるにはそれなりの鍛錬が必要だと思う。本書はスタンダートな鍛錬方法を教示してくれる一冊だ。実際にはこうした方法を習得、対話による実践を重ねることで高見を目指すこととなる。
本書の目的を「哲学の勉強というのが、思考のスキルを身につけることだ、という認識は間違っていないと思う。そして使い方しだいでそれは実用的にもなる…紹介するスキルは、広い意味で“クリティカルシンキング”…に属する」と述べている。クリティカルシンキングといえば哲学というよりもビジネススキルに近いように感じる。身近に哲学的思考を学べることは嬉しい。いわば日々の実践は自らを向上させるに違いない。

クリティカルシンキングを著者は“批判的思考”と解説する。詳細は本書ゆずるとして“意見を鵜呑みしない・吟味を”この2点が批判だと述べている。そのうえで「結論としては同意する場合でも、その意見が本当に筋が通っているのかどうかをよく考えたうえで同意するのであれば、批判的といってよい。この意味における批判的な思考法がクリティカルシンキングである」と意図している。

“科学的思考や懐疑主義、価値的議論、論理的懐疑主義”哲学がもつ難解な思考法をクリティカルシンキングという視点から比較的やさしく解説をしてくれる。比較的としたのはすこしでも集中力が途切れると理解率が50%を切りそうだからだ。こうした本を含めてだが本は一気に読んだ方が良いと思う。一度本から離れると読み返しが必要だからである。一年間に300冊読む大学教授がいるが、その方は通勤を利用して読んでいる。しかし同じところを2度読まないと決めているそうだ。実はこの心構えは大変有効である。少々頭が疲れる手法ではあるのだが….。
 
足るを知るという言葉が身に染みる一冊だった。

 

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