本書の意図ではないがオバマ発より「日本発」の方が気になる。レビューの前に少し脱線し世界の現状を確認したい。米国、EU、日本とG7の肩越しに経済環境を見れば最もリスクが高いのが日本であることに疑いない。EUはギリシャ問題を抱えてはいる。しかしフィンランドを筆頭にすべてが一致しているわけではないが全体のEUとしてのGDPは高く財政赤字は少ない。米国も同様である。しかし日本は将来に負担を残す赤字国債によって辛うじて消費水準を維持している。しかし南沙諸島など海域を拡張する中国対策はまったくと言って良いほど対応がなされていない。毎年防衛予算下げているにも関わらずこの状況なのである。加えてODAも一方的に削減している。
経済の“グローバル化”に対して政治はマイナス要因でしかないように感じる。ここでさらに枝野官房長官の債権放棄発言である。政治が“経済の足をひっぱる”今さらながら改めて感じる。癒着はないにしろ“俯瞰した考察力”の欠如を感じる。
本書は、オバマ大統領誕生は“ゴールドマンサックス”を始めとしたマンハッタン・ウオール街とオバマ、いわば政財官の癒着が危機を起こすというものである。帯には「新たなバブルのリスクが世界中に撒き散らされている」と書かれている。これも俯瞰した考察力の欠如と読んで良いように思う。日本の現状からは程遠いように思えるが、実際原油、金など相当な高値となっている。
本稿は相場を読み解く物ではないが、行き先を無くした“資金”が運用先として一次産品に向かっていることは間違いない。このようなことと政治をストレートに結びつけるのは如何なものかと思うが、本書調査からそれを読み取ることができる。
こうした背景には金融緩和があることは周知されている。当然のことながらその責任の一端は日本にある。
300ページにまとめられた本書であるが実に読み応えのある一冊だった。