90年代の証言 岡本行夫

On 2011年5月12日, in 政治・経済, 書評, by admin

岡本行夫 現場主義を貫いた外交官 90年代の証言

本書で90年代の証言レビューは2冊目。インタビュイー岡本行夫氏は外務省退職後、岡本アソシエイツを設立。その後橋本内閣にて首相補佐官、小泉内閣では内閣参与、首相補佐官を歴任。起業経験もある外交のプロである。

インタビュアーは五百旗頭真・防衛大学校校長、伊藤元重・東京大学教授、薬師寺克行・朝日新聞論説委員(すべて当時)の錚々たる面々である。本書の感想を一文で表すと“外交と政治の難しさ”を痛感させられた。読み応えのある一冊である。

偶然にも本日“米上院軍事委員会の3議員が普天間飛行場、嘉手納基地への統合を提案”とのニュースが流れた。これは辺野古への移転計画が大きく変更となる可能性を示している。その要因は震災予算との関係を指していた。本書を通じて沖縄米軍基地が如何に難しい問題であるかを現場目線から知った。本書を通じて嘉手納基地との統合計画は再三の交渉によっても難しいことが明らかにされていた。震災に伴う予算との関係性とは少し考えづらい。いまだ明らかにされていないが15兆から20兆の補正が必要と言われている。しかし麻生内閣は(真水ではないが)平成20年度38.5兆円 平成21年度 15.7兆円の補正予算を実行している。こうしたことだけを見ても、表面化されていない何かを感じる。

橋本内閣での首相補佐官は沖縄が担当でありその関係は深い。外交、防衛、国内、沖縄の関係性を俯瞰して考察し絡まった問題を解いている。基地については次のように発言されている。『日本国内の米軍基地の75%が、国土面積の0.6%しかない沖縄に集中している…..何年かかっても、沖縄の基地の一部を本土に移す政策目標を立てるべきだと思います。これはやれない話ではない。過疎に悩む地域では自衛隊基地の招致運動が盛んです。…移転は不可能ではないと思っています』

紙幅から多くを書くことはできないが、知性、行動力、理念ともに素晴らしい人物だと感じた。こうした官僚や官僚OBの国家を思う気持ちを政治は正面から受け止めなければならないのではないか。いまだ混沌としている民主党政権は脱官僚を旗印に上げている。しかし外交と防衛は官僚が情報を寡占化している。また代議士で外交のプロという存在など皆無と言ってよい。こうしたことは普遍化した事実としてセミナーなどで言われている。国民も一体となって国難を乗り切ることが後世に対して課せられた義務ではないか。

感慨深い一冊だった。

 

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