HBR 2011/1 検証 失敗の本質

On 2011年5月10日, in 書評, 組織, by admin

Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2011年 01月号 [雑誌]

戦場のリーダーシップ『求められる・現場感覚・大局観・総合判断力』 野中郁次郎

 HBR編集部は一橋大学名誉教授 野中先生に<人々を導くリーダーシップとは何か>というテーマで問いている。この20年日本経済は閉塞感に包まれている。2002/2から67ヶ月間に渡って続いた“いざなみ景気”は実感すら無かった。その後2008年9月にリーマンショックを迎え加速的に景気は悪化する。本稿は東日本大震災以前のものであり震災後のリーダーシップついて問うたものではない。

編集部は本稿の目的を次のように述べている。『日本企業はかつてのような勢いを失い、新しい価値創造に向けた取り組みを求められている。突破口を切り開くために、日本企業が目を向けるべきは『リーダー』である』と述べている。そのリーダー像を明らかにするために“太平洋戦争の指揮官たちの生き方や行動を通じて現代において求められるリーダー像を明らかにする”としている。
 
 野中教授らは“太平洋戦争における組織の問題を『失敗の本質』で問い直している。そこで得た知見について次のように論じている。

『失敗の本質で得た重要な命題の一つは、日本軍における過去の成功体験への過剰適用です。いわば”成功は失敗の元とでも言えましょうか』と述べ経営学的な問題意識は“情報処理”だったと述べる。そのうえで『情報を元に適応することはできても、創造することは難しい。創造の世界を開くのは、自分たちの思い(暗黙知)を言葉(形式知)にし、言葉を形(実践)していくダイナミックなプロセスです』

ここでの論考は“情報・反応”→ 過去の成功体験に基づく行動というフローで思考が停止による失敗と理解をした。いわゆる弁証法(テーゼ・アンチテーゼ・アウフヘーベン)という知の創造がなされなかったことがリーダーにおける問題として指摘を感じる。

次に知識創造プロセスをマネージするリーダーシップに求められるのはアリストテレスの提唱した『フロネシス・phronesis』であるとしている。フロネシスリーダーとは『フロネシスは究極の知。それは文脈に即した判断、適時、絶妙なバランスを具備した高度なリーダーシップです』と定義している。日々変化する環境の文脈に俯瞰して思考し判断選択することは難しいがこれを可能にするリーダーが求められていると述べている。さらにこうしたリーダーに求められる能力として次の6点をあげている。
①  善い目的を作る能力 ② 場をタイムリーにつくる能力 ③ ありのままの現実を直観する能力 ④ 直観の本質を概念化する能力 ⑤ 概念を実現する政治力 ⑥ 実践知を組織化する能力、組織に組み込む能力、としている。

こうした“資質”を持つリーダーを本稿にて検証している。こうしたリーダーは数多くの修羅場を積んでいた。決して一朝一夕に身につけたものではない。多数の経験が資質を磨くのではないかと思う。資質が先天的か否かをここでは問わないが『経験』が必要なことは間違いなさそうである。

 

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