中国問題の内幕   清水美和

On 2010年12月21日, in 書評, 雑感, by admin

「中国問題」の内幕 (ちくま新書)

本書は日中関係、共産党支配、中国軍、格差などで構成されている。靖国参拝に対する中国の反応や問題などを考察するとき、日本の政治・経済環境、中国の政治・経済環境を十分に整理しなればならない。そのうえで過去の『日本と中国の関係』、『日本と東アジア』、『中国と東アジア』またこれに関連する米国の対応などを俯瞰して観る必要がある。そうでなければ不毛な時を過ごすことになりかねない。本書はこうした問題意識を少なからず解決してくれる一冊なのである。新書でありながら幅広く論じてられることから日中関係についての考察を試みたい。

日本と中国の関係を考察するキーワードとして『従軍慰安婦』『台湾独立』『靖国参拝』の3点があげられる。このうち『従軍慰安婦』に関することは過去の出来事に対する解釈であり台湾と靖国は未だ継続している問題である。よって過去の出来事であれば十分な調査を行い、それを当時の文脈に置き換え考察し、議論し整合性を保ち結論を出すということになるのではないか。

裁判であれば原告と被告、相互の証拠を出し合い証拠を裁判官が認めることから始まる。この件について本書では次のように述べている。

政府答弁では『答弁書は、河野談話について閣僚の署名はなく『閣議決定はされていない』と客観的指摘を装いながら、実際にはその政治的意義を矮小化し、『(政府関係資料には)軍や官憲によるいわゆる強制連行を直接示す記述は見当たらなかった』と安倍の国会答弁を追認したのである』と述べている。

その後“林博史 関東学院大学教授が米国で発表した論文をもととなり、に安倍首相は
訪米時のメディア取材に対し「慰安婦問題については日本に責任がある」「わたしはかねてより河野談話を支持していた」と、従来の主張とは180度異なる発言をした。

これが本件に対する結末ではないであろうし、詳細は今後も詰める必要があるだろう。私が懸念するのは今後議論重ねるうえでの『資料の信憑性』である。国内では薬害エイズ問題や昨今では検察による証拠改ざん問題などもあった。中国は餃子事件や汚職など国家としての信頼性に疑問を持たざるえないことが数多い。相互信頼できる資料でなければ前に進むことは極めて難しいと思う。相互国民の理解が得られる結論が一日も早くでることを望んでならない。東アジアの一員またリーダーとして信頼される国家となるためには、威厳を持ってこうした問題に取り組む必要があると考える。
『台湾独立』『靖国参拝』などやるべきことに限りはない。

中国という国家を知るうえで大変参考になった一冊である。

 

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