希望のつくり方  玄田 有史

On 2010年12月9日, in 書評, by admin

希望のつくり方 (岩波新書)

経営学の類では著名な玄田教授であるが【希望学】なる領域の研究をなされているとは存じあげなかった。本書は著者名で1ページも開かず購入した。

そもそも【希望】とは何であるのか。例によって広辞苑を紐解いて見る。① ある事を成就させようと願い望むこと。② 将来によいことを期待する気持ち とある。明鏡国語辞典はこれに加え『将来に対する明るい見通し』とある。ざっくりまとめると“将来に対して期待しそれが成し遂げられる可能性を感じられる状態”かと思うのである。

本書はこうした希望が持ちにくい持てない社会に対して問題を投げかけ解の端緒を導き出している一冊である。子供の頃は誰しも漠然と明るい見通しを持っていた。いつのまにか『格差』や『違い』積み上がってくる。ギャップが積み上がると『希望』が持てないことに繋がりやすいのではない。少し厳しいかもしれないが“リセット”する勇気を持つことでいつでも希望は持てると私は思う。

著者は希望について次のように述べている。『希望とは何なのか、よくわかりませんでした。それがいろいろ考えるうち、どうやら希望というのは、四つの柱からなりたっていることがわかってきました』この四つとは ① 気持ち、思い、願い ② 将来こうなりたいという具体的なこと ③ 実現 Com true ④ 行動 であると結論づけている。

 この四つは“目標達成のキーワード”と同様である。著者は研究者であり目標達成のコーチングを行っているわけでないが、小さい目標を積重ね大きな目標を達成する昔ながらのプロセスが崩壊してしまっているのかも知れない。自らが変わらなければ状況は何もかわらないのだが“誰も自分を理解してくれない”と捉え負のスパイラルに入っているケースを多々見ることがある。『俯瞰して自らを見る勇気』『自らを棚卸する勇気』が必要なのだ。そのうえで②であげられた具体的イメージをしっかりと捉え、辿りつくまでのマイルストーンを明らかにしなければならない。マイルストーンに達するまでが④の行動となる。
行動は困難なことも多い。よって①の気持ちや強い思いが重要となる。こうしたことを繰り返すことによって③の実現が可能となるのである。
 
 本書は若者を主たる対象として論じているが、実社会ではミドルエイジ・クライシスにより希望を見出せない30代~40代も多いと思う。しかし結局自分で乗り越える他に方法はない。私自身こうして書きながら自分に言い聞かせているのだが、一生こうしたことを繰返すのだと考えている。

 本書は社会学観点から多様なことを学ばせてくれる一冊であった。

 

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