なぜ、脳は神を創ったのか? (フォレスト2545新書)

くだけた著書名が多い筆者であるが、世界的な脳研究者である。上智大学外国後学部英語学科卒(言語学)三菱地所入社後、イエール大学留学、カーネギーメロン大学大学院哲学科計算言語学研究科博士課程転入、カーネギーメロン大学大学院博士課程修了
要するにものすごい人物なのである。“頭の良い人は難しいことを簡単に説明する裏を返せば簡単なことを難儀に話す人は如何なものかということになる。本書は印象深いところが多いのだが「宗教と統治」に強く興味を引かれた。米国中間選挙を終えたところで時期的にも良いように思う。
中間選挙にて民主党は大敗したがオバマ政権誕生時の米国は、「我々の民主主義はここまで進化した」ともの凄い盛り上がりであったらしい。リーマンショック直後であり脆弱な経済があらわになったにも関わらずである。当時出張などで米国に行った友人が皆同様に語っていた。この現象を本書は次のように語っている。
「たとえば、前任の大統領、かのジョージ・ブッシュはイギリス王室の遠縁にあたる、それこそ正統派のWASPでした。彼は大多数のアメリカ人から見てもおかしな戦争に突き進み、失態をくり返し、結局は金融危機を招きました。にもかかわらず金融危機の克服しかり、アフガニスタン撤退問題しかり、史上最悪の後始末をオバマに託し、大統領経験者として悠々自適の人生のつづきを楽しんでいます」
著書はこれをプロテスタントとカトリックの関係から説明しているのである。文中のWASPとは【White Anglo-Saxons Protestant】の略である。これが支配層の条件ということである。ようするに金融危機克服失敗、アフガン撤退失敗などが起きたら「カトリックのせいにすればいい」と考えているというのが著者の考えなのである。政権押し付けとも言える。
これがあまり知的でない週刊誌や特別な情報がると言いたげな人が酒の席で語るのであれば聞き過ごせば良い。しかしアカデミックな人物が論証の元に語るとなると話は別である。一神教の怖さとでも言えば良いのだろうか。比較文化論を少し学ぶとこうしたことは、極めて納得がしやすい。多数の戦争は宗教家が関与しているであり、日本だけに原爆投下されたのは『キリスト教』でないことによると著者は述べている。日本人はわかりにくい理由であるが、信仰心が強い国家や人であれば温度差を埋められるのだろう。
こうしたことは知識としてこうしたことが理解できても肌感覚として理解は難しい。外務省はどうなのだろうか。前原外務大臣はメール問題でいとも簡単に代表の座を辞している。あの事件も危うさ感覚的に掴めなかったのかと思う。果たして対外インテリジェンスの戦いに勝てるのだろうか。

 

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