経営戦略  大滝精一他

On 2010年10月22日, in 書評, by admin

経営戦略―論理性・創造性・社会性の追求 (有斐閣アルマ)

経営戦略  大滝精一他

『組織論』でも紹介した有斐閣アルマシリーズである。書棚を見るとこのシリーズが20冊以上はありそうだ。有斐閣アルマシリーズの特徴を説明すると、幅広い基礎知識が習得できることがまずあげられる。次に著者が第カテゴリーの第一人者の一人であるということ。三番目に取り上げられる参考文献は知を深めることを可能にする。政治、経済、法律など正面から学ぶことを可能にする。いつも頼りにしているシリーズである。

本書『経営戦略』も期待を裏切らず基礎知識を改めさせてくれた。経営戦略もある程度読込んできたつもりであったが、振り返りを含めて本書を手にした。
 経営戦略は小規模ではなく、大規模組織においてはじめて効力を発揮するもの。また小規模な組織では戦略より戦術などいう話を聞くことがある。しかしもう少し別な捉え方ができないだろうか。経営戦略が無いということは環境を構築していないということなのである。変数である環境に左右され当事者能力に欠けるということにもなる。少し俯瞰して考察を重ねると、小規模企業の経営は『コントロール可能な構造』であると考える。
 たとえば経営戦略を立案・実行するうえで『環境変数』は重要な要素である。大規模化すればするほど実際には正確な環境変数を組込むことは難しい。家電メーカを例に取って見ても在庫調整の手法を変更するだけで数億単位の収益が変わるとのことである。これは実際に行った日本を代表する企業の方に直接お話を聞いた。またその場におられた他のメーカの方も認めていた。更に工場で数銭の単位で原価調整をしているにも関わらず、量販店では数万円の値引きを行っている。また為替により数億単位の利益が変動する。など環境変数が多数存在する。
 マイクロファームの経営戦略ではこうした『環境変数』を考慮する必要はあまりない。私は『リソースの見極め』が重要な課題であると考える。特に『経営者個人のリソース』である。“経営者個人”が核となるリソースであることは珍しくない。こうした企業は、組織がゴルフのプレイヤーとキャディの関係にある。プレイヤーが万能とは限らない。ドライバーは上手いがパターは勉強が必要ということも多い。パター専門の人材補強によりスコアーは上昇する。良い決算が迎えられるということである。

 経営者個人が、自己や企業のリソースを正確に判断しないことが成長を阻害しているのではないかと考える。精神論やモチベーションは当然のことながら目標達成において重要な要素である。しかし企業として他社より優れている点、劣っている点を謙虚に評価する必要がある。更に定量化するこが重要だ。すべてではないが、アバウトは思考を停止することがある。精神論も同様なときが多い。戦略を構築するにはまず自社のリソースを見極めるここがスタートラインなのである。
そのうえで『部分的無知』のもとで決定していることを認知しなければならない。将来は不確実性が支配している。不確実性で覆われているということは柔軟な創造性により多様な角度からの解釈し対応可能な状態を構築することが求められる。こうて述べると難しそうにも見えるが、構造パーツである変数が少ないということは戦略の有効性が高いことに結びつくのである。
長くなるので一度止めるが、戦略と構造、構造と変数、変数と組織については別な機会に論じたいと思う。

 

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