星野リゾートの教科書   中沢康彦著 日経トップリーダー編

星野社長がリゾートホテルの再生や運営手腕が素晴らしいことは目にする機会が多い。こうしたことを可能にするには「組織構築力」と「運営力」に着きる。資本との関係性を問う人もいるが、実績と手腕があるから資本が付いてくるのである。コンセプトメイクからはじまり、技術力の創出、サービス、すべてが経営者を含めた人に着きるのだ。

経営者やリーダーとフォロワーの関係で悩む経営者は多い。バーナードの組織均衡論の言葉を借りれば、“組織に帰属することで動機付け、それにより貢献意欲が向上し、待遇によって留まるように誘因するということである。こうし関係性はコミュニケーション・共通目的・協同の三点が強調される。強調される3点は対話が必要である。

 経営者は、共通目的や協同の達成手法においてロジックにブレがあってはならない。対話においては“共通の言葉”や“共通の知識が求められる。これは組織の型とも言える。このような枠組、型が形成されることによって、組織文化が構築されると私は考察する。本書は枠組や型を形成する方法を教示してくれる。少し本書を抜粋してみたい。

「企業経営は、経営者個人の資質に基づく「アート」の部分と、論理に基づく「サイエンス」の部分がある。私は経営職に就いた当初から自分にアーティステックな経営判断を行う資質があるとは思っていない。どんな時にも自分の直感を信じることができず、それはあまりにもリスクが大きいと感じてしまう。私は自分の経営手法の中でサイエンスを取り入れる必要性を感じ、教科書を根拠とする経営を始めた」

マイクロビジネスは、俗人的な経営者の感覚に頼るところが多い。3年50%が倒産する理由の一端に、著者の言葉を借りれば「サイエンス」の不足があることは否めないのである。たとえば事業機会と組織成長の関係性があまりにもアンバランスであったことが倒産の理由となっていることはさまざまなところで目にする。しかしこれについてもスタンダートな組織論の教科書の範囲なのである。またアートには時間軸も必要である。自らがアートであると思っても単なる時代遅れであることは珍しくない。

本書でいう“教科書”を従業員と共に読むことは、形式知の共有へと繋がる。形式知の共有は対話を可能とするのである。さらに活字の解釈を知ることができれば、文脈をも知ることが可能となるのである。経営の現場に置換すると、従業員に読ませることが難しい。私自身の経験では未だ成功の実績は無い。一冊を読ませることは難しくとも、数ページでも知を共有することが重要であると思われる。

本書には約30冊の教科書が紹介されている。以前からのブログで概ね紹介しているものの、習得はできてない。やはり教科書であるだけに何度も繰り返し読み自らの力にしなければと痛感する。サスティナブルに経営するには、地に足がついた行動が重要である感じさせる本書である。

 

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