思考の整理学  外山 滋比古

On 2010年10月6日, in 書評, by admin

思考の整理学  外山 滋比古

丸善本店で長い間平積みされている本書である。1986年初版、手元の書籍は66版を数えている。24年に渡って読み継がれている名書と言って良い。

物事の考え方や知的創造を、如何に行うかの心構え的が連綿と綴られている。「知識不足がコスト増」であることは間違いない。しかし知的な創造ができなければ、知識のパワーは半減する。この点について著者は次のように述べている。

「第一情報を踏まえて、より高度の抽象を行っている。メタ情報である。さらにこれをもとにして抽象化をすすめれば、第三次情報ができる。“メタ・メタ”情報というわけである。このようにして、人為としての情報は高次の抽象化へ昇華して行く。思考、知識についても、このメタ化の過程が認められる。もっとも具体的、即物的な思考、知識は第一次的である。その同種を集め、整理し、相互に関連づけると、第二次的な思考、知識が生まれる。これをさらに同種のものの間で昇華させると第三次的情報ができるようになる」

経営者が社員に対して強く感じることではないだろうか。ある出来事を他の情報と併せてシェイクして思考する。時間軸を変えて考察する。思考を重ねることで創発が生まれるのである。
自己に問題識を移し変えれば、“思考の癖”または“思考の慣性”が問われる。慣性は積み重なり身に付いたものである。“AはA`に変異が可能である”とまでは考えてもVをプラスすることでKに変革するなどとは考えなくなっている。柔軟性の欠如・ステレオタイプの思考回路とも言える。この点に気付けば慣性を改めれば良いのだか、慣性であるだけになかなか治すことは難しい。今行っている治療法ひとつの問題解決には必ず5つの解決方法を出すことにしている。違った角度からのアイデアが生まれるときがある。アイデアマラソンなどこうした問題解決には良いのかも知れない。

本書では論文執筆の問題意識やテーマの絞り方について数多くのページを割いている。科学者の間では“行きがけの駄賃のような発見や発明をセレンディピティと言うらしい。言葉の由来はここでは割愛し筆者の思いを引用して見たい。「考えごとをしていて、テーマができても、いちずに考えをつめるのは賢明ではない。しばらく寝させ、あたためる必要がある、とのべた。これも対象を正視しつづけることが思考の自由な働きをさまたげることを心得た人たちの思い付いた知恵であったに違いない」
これをビジネスの文脈に落とすと長期的視点と問題意識となるのではないだろうか。目先でなく先を見据えて考察を重ねる。時間をおいて再度考察する。この繰り返しだと思う。スピードが重要であることは言うまでもない。概ねにことは他者でもできることであり、大きな違いはないことが多い。以前HBLで論じられていたがビジネスモデルと称して言われることも概ねは二番煎じであり何かの変革であると。イノベーションでなく多少の変革に過ぎないのである。昨今良く思うが“揺ぎ無い価値”を長期間熟成させ構築することがサスティナブルな発展のKFSではないかと思うのである。セレンディピティはビジネスでも不可能ではないと考えている。

 

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