GOETHE 2012/5
GOETHEには石原慎太郎知事のエッセイが掲載されている。深いリベラルアーツに感性、さらには長い政治経験。もうだれも足元にも及ばないと思う。また「男の粋な生き方」という題目にも強く惹かれる。今回副題には「挫折と再起」とある。
著者は挫折についてこうのべている
「男の男としての特性は挫折を人生の糧に変えることができることだ。それが男らしさというものだ。大方の日本人が大好きな西郷隆盛も彼を見出した名君の島津斉彬が死んだ後彼の弟の久光にひどく嫌われて2度も島流しにされたり、未遂に終わったが自殺を図ったりもしている。あの豪傑風の西郷さんにしてもだ。しかし彼はそれを超えて明治維新を遂行する英傑となった」
“挫折”とは“(計画や事業などが)中途でくじけ折れること。だめになること(広辞苑)とある。挑戦をしなければ挫折を味わうこともない。”人生の糧に変える“これができればあのことがあったからいまの自分があると、あとから解釈をすることができるようになればそれは自分自身のコンテクストを豊富にすることは間違いない。西郷隆盛でさえ”自殺未遂“をするほどの挫折を経験している。ようするに艱難辛苦は自らを鍛えてくれる”機会“だと捉えることが大切なのだ。
最後の著者の競争についての考え方をご紹介したい
「…いかなる分野においても競争こそが人間を鍛えてくれるのであって、人間が逞しくなる術も競争に晒されることでしかあり得ない。自分はこのことであきらかにあいつら劣ってはいても、それならこれでという自覚と自負、あるいはそれ以前に、ならばこの次はきっと勝ってみせるぞという発奮がその分野で成長を促すのであって、そのための工夫と努力こそが人間をしたたかに育ててくれるんだ」
この気持を決して忘れてはならないと思う。人は平等ではない。健常者だけを捉えても、運動神経を含めた脳力、感性、また家族が持つ資産、歴史など平等なことなど何一つない。親の愛情すら優劣が付けられる。ただいまの社会ではチャンスだけはある。挫折を経験として捉え再起を図れるかどうかは本人次第だ。