経営論  宮内義彦

On 2011年7月7日, in 書評, 経営者, by admin

経営論

本書初版は2001年。国内が失われた10年と言われていた頃になる。いまと違うのは国家債務と政治への信頼感ではないか。少し調べてみると小渕総理が倒れ、森内閣が誕生した年とのことだ。小泉旋風の直前である。本書はそんな時期に書かれている。

著者は現在もオリックスグループ最高責任者として会社を牽引している。また細川護煕内閣より規制改革委員を長きにわたり務めている。最近規制改革という言葉をあまり聞くことがない。果たして規制緩和は実行できたのか。まったく進んでないというのが現実だろう。かんぽの宿問題では、鳩山邦夫衆議院議員からずいぶんと責められたが不動産価値は下がり続けている。未だ赤字を垂れ流しているとするならば、政治判断は財を毀損させたのではないかとさえ感じてならない。

著者は“社会的要請で経済活動を制限せねばならない規制の範囲はもっと狭め、市場経済のプラス面を取り入れることができるはずです。そのほうが経済全体にとってはプラスなのです”と述べている。NTTやJRの例はあるものの、他については検証したわけではない。仮説として捉えることが必要である。しかし規制や認可が“安心”に繋がらないことは数多い。例えば証券会社や銀行は許認可業務であるが倒産をする。今回の原発も同様であろう。原発のような事例は新しい取組みが必要だと思うが、著者がいうように市場経済を取り入れられて始めて発展をするのだと思う。競争が商品やサービスを創出するということを失念してはならない。

 規制改革と景気対策はトレードオフではない。しかし1992年以降約175兆円の経済対策が行われている。著者は経済対策が不況を長期化させたとして次のように述べている。

「景気対策として政府が需要を作り出すことは、ちょうど病人にカンフル剤を投与し続けるのに似ています。構造改革によって効率を高めるという抜本策を進めようとしなかったために、不況を長期化させてしまいました」

景気対策における実際の乗数効果は極めて低い。著者がいうように規制改革を実行し抜本的な対策を打つべきではないかと思う。

 

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