いまこそ、日本、繁栄の好機! (WAC BUNKO)

過日著者を囲んでの食事会に参加する機会を得た。15~20人の会であり著者の本音を伺うことができたように思う。著者は月刊誌willやvoiceなどで毎月のように発言をされているのでご存知の方も多いかと思う。そのテーマとなったのが本書である。

本書は概ね政治軸に経済と中国問題について論じている。本書初版が9月29日であるので尖閣問題直後が初版となる。残念なことに尖閣についてはふれてはいない。しかしこうした問題が発生する環境が国内にあることを著者は述べている。

『細川護煕内閣は94年4月にわずか8花月で羽田孜内角に交代し羽田内閣もまた1ヶ月半で村山富市内閣に代わった。面倒な事件が起こったときは与野党が一致して首相を支え、またマスコミも国民も覚悟を決めて国難に当たるべきだと思うが、そういうことがまったく感じられない珍しい国だとも言える』

これは米国と北朝鮮の1993年のプルトニウム問題時の米国の対応と国内を比較して著者は述べている。こうしたときの日本の姿勢はいまも全く変わっていない。例えば尖閣と同様の問題が明日発生したとしても現状の国内法では自衛隊が出動することは未だできないのである。それも国際法上は認められており国内法が無いこと事態が問題なのにである。一部議員からはこうした問題の発言がなされているが、議論すらなされていない。やはり珍しい国家なのか。

著者は94年時の日本に対応について『アメリカは日本にも協力を要請した。北朝鮮の原爆開発は日本の驚異だから協力は当然だと思ったらしいが、日本はす右往左往するだけだったので、アメリカはあのとき日本を見捨てたと思う(その時は村山談話が出た)』

おそらく著者の推測が正しいのだと思える。というのはウイリアム・J・ペリーが日本経済新聞「私の履歴書」で次のようのべている。『アスピンに請われ国防副長官になっていた私はBUR(ボトムアップレビュー)の総指揮官を任されていた。そして最終的に出した結論は米軍は二正面戦略を維持できないというものだった…その現状は今も変わっていないと思う』

要するに米国自身が何らかの問題を抱えている状況(今回のアフガンのような)ではこうした問題が発生したときは長期的な対応が難しいということになる。著者や京大中西輝政教授の発言を一考する必要があるのかもしれない。こうした問題は国内法だけでなく米国はもちろん東アジア全体のことを考え国民とコンセンサスを取らなければならない。リーダーある首相や与党の説明責任は大きい。また長短両方の視点で考察を重ねる必要もある。軽はずみな言葉がその後の方向性を損なうのである。私はこの1年間のいたずらと言っても良い発言が今の事態を引き起こしていると思うのである。

自らも日頃の言葉や行動は慎重を期さなければならないと再び認識する次第である。
著者がいつまでもご健康であり、またあのような機会を持てることを願ってやまない

 

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