「通貨」はこれからどうなるのか      浜 矩子

「通貨」はこれからどうなるのか (PHPビジネス新書)

エコノミストであり、同志社大学教授でもある著者が、これからの「円」について論じた一冊。ドルやユーロが凋落し円が50円まであがるという仮説を立証すべく論じたものである。しかし私にはどうにもそうは思えない。ひとつには通貨的や財政という視点だけから論じているからだ。国防や外交など国家としての大切なことはすべて割愛している。また“潜在能力”の評価も不足しているように思う。
たとえば8月3日に発表された、自民党のマニフェスト。これは国の将来を考えたのだろうかとさえ思える。あまりにも悲しいのですこし印象を述べたい。まず「日本再生債」なるあらたな“国債”の提案。一般会計と別枠とし「財政の健全性確保」。超長期で弁済、資産になるなど理由付けに知恵を絞ったのだと思う。しかし『借入』には『弁済』義務が生じる。次世代への資産という考えなのだろうが、いまは負債を減らすことが最大の問題ではないのか。そのうえでTPP、エネルギー問題はすべて先延ばしである。幼保一体化の記事が別ページにあるが、なにやら終わりを感じてしまう。
果たしてEUや米国、また他のOECDの国々と比較して日本の“政治能力”はどう評価されているのだろ(こう書いたところで、webで調べたところあまりの酷さに暗い気持ちに…)

(資料)OECD, Government at glance 2011 (Figure Ⅱ 2)
(出所・資料)社会実情データ図録(http://www2.ttcn.ne.jp/honkawa/)

これはギャップ社の調査をもとに作成された国のリーダー層であう政治家の能力と信頼の相関図である。相関=0.8224であるから信頼感は高いと思われる。上回ったのはエストニアとハンガリーだけだ。アイスランドには信頼感で下回っている。

描けない将来像とコンセプト、ポピュリズムな施策。信頼など得られるはずもない。本書が主張する、“対ドル、50円”の時代は信頼するに足る『政治家』が産まれることが前提条件となるのではないか。

 

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