HBR 2012/5
Finding Great Ideas in Emerging Markets ネイサン T. ワッシュバーンら
Harvard Business Review (ハーバード・ビジネス・レビュー) 2012年 05月号 [雑誌]
BOP(base of the pyramid)への意識が一層高まっている。G20全体の成長率が鈍化していることからかも知れない。しかしそれ以上にイノベーションが生まれていることが要因のようだ。本論はイノベーションのポイントはマネージャーにあり、その人物像を具体的に提示いている。この理論はBOPに限らずイノベーションを可能にするマネージャーの特徴として捉えても良いのではないかと考えている。
本論ではイノベーションを可能にするマネージャーを『世界の橋渡し役』と名付けている。世界の橋渡し役とは新興国市場におけるイノベーションの潜在力を認識し、現地発のアイデアを創発する。それを本社に売り込める人材である。
ここではGE、インテル、コノコ・フィリップス、ブリックス・アンド・ストラットンなどの成功事例や52人のマネージャーにインタビューを行い『世界の橋渡し役・人材育成方法と組織体制構築方法』を提示している。
まずは橋渡し役の適正者の特徴を4つあげている。ひとつめは“現地スタッフと信頼関係を築き維持できる者”とし、次に新興市場の理解者であること、3つめとして長い職歴を持っていること、最後に本社への売込み力が必要だと述べている。
こうした能力を持った橋渡し役の行動を大きく3つにまとめている。まず当然のことながら『アイデアを出す』といことだ。それは現地の本質を見ることだと言い『橋渡し役の仕事に必要なのは“見たいものを見る”から“見るべきものを見る”への本質的な変化である』と述べている。自らは本社視線からスタートを認識することだと表現している。
次に『翻訳者を育てる』をあげている。翻訳者とは“現地の理解し橋渡し役に説明ができる人物”だと延べている。
最後の『実験』の大切さを説いている。それはテスト・マーケティングを行うことだ。その成果を持って本社の理解を得るということになる。
仮説をエスノグラフィーで検証する考え方に近い。検証で競争環境を含めたリサーチとなる。そこでは現地の空気をも理解している翻訳者が必要だということだろう。マーケットを理解しようとするとき、固定概念にとらわれやすい。しかしマーケットは常に進化している。これはBPOに限ったことではない。どのマーケットも常に進化している。橋渡し役を含めてマーケットを翻訳できる人物が必要なのでないかと考える。
戦略構築の参考にしたい論文であった。