聞く力   阿川佐和子

On 2012年3月1日, in 組織, by admin

聞く力―心をひらく35のヒント (文春新書)

3年前になるが、著者のファシリテーションを直接見たことがある。コメンテーターは中谷巌一橋大学名誉教授、オリックス宮内義彦会長というゲストだった。小さな会で参加者は100人程度。数メートル先には3人がおられた。リーマン・ショック後の日本は混沌としており、中谷先生の【資本主義は何故自壊したのか】の出版前後だった。著者はこれからの日本経済や失われた20年についてお二人の考えを引出していく。それは匠とも思えるヒアリング力であった。そんなことを思い出しながら本書を拝読しました。

ファシリテーションではなくとも、人間関係を構築するうえでヒアリング能力の重要性はいうまでもないと思います。聞く力は対話の“要”です。本書の中で著者はさまざまな人とのインタビュー経験を綴っています。それは極端に言えば“対象を選ばない”(選べない?)ということになっていきます。それは実に難しいことです。ただ次の言葉に“聞く力”の共通性を感じました。

「…話を聞く。親身になって話を聞く。それは、自分の意見を伝えようとか、自分がどうにかしてあげようとか、そういう欲を捨てて、ただひたすら「聞く」ことなのです。相手の話の間に入れるのは、「ちゃんと聞いていますよ」という合図。あるいは「もっと聞きたいですね」というサインだけ。そうすれば、人は自ずと、内に秘めた想いが言葉となって出てくるのではないでしょうか」

以前、組織文化と組織構築が理論的背景に論文を執筆した経験があります。その過程で感じたのは、突き詰めると「対話力」であり「言葉を引出す力」が組織創りの礎であると痛感しました。会社として求める条件はあります。しかし、何を求めて就職先として選定したのか、本当は何がしたいのか、表面的でない退職理由は等など。思いを引出すことがまず求められるのかと想います。そのうえで“自分はこんなことがしたかった”を気づかせ“言葉を引出す”ことが大切なのだと思います。

それを踏まえれば、自然と絆を太くなっていきます。“聞く力”人間力の基礎力と言っても良いのかと感じます。本書は聞く力のテクニックが詰まっています。 “一読の価値ある”一冊です。

 

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