決断できない日本 (文春新書)

1年ほど前【沖縄はゆすりの名人】との発言があったと国務省日本部長(米国)があったとの報道があった。本書は発言者と言われた著者が発言の有無と日米安保や沖縄問題などについて書き下ろした一冊だ。著者は本書を出版するために国務省を離職している。

結論を先取りすればロジックを追う限り“発言は無かった”と思う。自由報道協会の記者会見などを見ると実際の報道の偏りはひどいものがある。しかし執筆者のみが真実を語れるのであるからこれ以上は深追いをしないことにする。

本書を通じて最も感じたのは“決められない国”ということだ。言葉を変えれば無責任ということになるのだろうか。また“意図が違う・覆す”など何ら珍しいことではない。沖縄に方々に不信感が募るも理解できる。総理の発言でさえ容易に覆るのであるから。すでに存在している以上、基地は動かしがたい。下記の地図で明らかなように地政学的に中国やロシアの太平洋進出を阻む重要な位置に日本は存在する。

だが国内防衛組織は、GDP1%内という予算枠、自衛隊の地位、憲法などが絡み合い脆弱な存在となっている。2008年の尖閣諸島、北朝鮮ミサイル問題などでも明らかなように非武装中立はありえず、抑止力が戦争を起こさせない最も効果的な担保となる。

こんな前提で本書を読み進むと国の進路の“危さ”がことさら目に付く。ホワイトハウスから危うい日本を次のように見ている。
「…(テロなどの問題に対して)ホワイトハウスの当局者は、日本の原発警備の手薄さに驚き、銃で武装した警備員の配置が必要であると力説をしました。これに対する日本政府当局者の答えがふるっていた。“日本の原発に、銃で」武装した警備員は必要ありません。なぜなら、銃の所持は法律違反になるからです」なんというありさまかだろうか。ジョークであって欲しい。こうしたことから国務省や国防総省の「”Not deciding is deciding (決断をしないことが決断になる)と言って、コンセンサスばかりを重視し、決断できない日本の指導者たちを批判することが少なくありません 」言葉を紹介している。

本日付日経には経団連米倉会長が東電国有化について「国有化してちゃんとした経営なんて見たことがない」との発言が載っている。国の行末やリスクを考える時期に来ているのかも知れない。

 

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