ハイエク 知識社会の自由主義 (PHP新書)

ハイエクは“知識・市場・自由”を読んだことがある。だが難解すぎ集中力を保つことすら難しかった。日経朝刊“やさしい経済学”では最近“危機・先人に学ぶ”と題してさまざまな賢人の経済学や哲学を紹介する特集が組まれている。ハイエクは八代尚宏(国際基督教大学客員教授)が紹介をしていた。とてもわかりやすい解説で俄然興味をもった。再度“知識・市場・自由”に挑戦を試みようかと思っていたところで本書とであった。

本書はハイエク、ケインズ、アダム・スミスの主張の違いを実にわかりやすくまとめてくれている。著者の理解がよほど深くなければこうした本を執筆することはできないだろうと思う。

誤解を恐れず乱暴にひとことでハイエクの主張を言えば“自由主義”ということになる。自由にすることで需要と供給のバランが取れるということになろうか。日本では小泉・竹中路線がそれに近い。真逆にあるのが小渕政権・宮沢財務大臣のケインズ型公共事業ということになるのだろう。

海外へ目を向ければイギリス・サッチャー政権、米国・レーガン政権がこれにあたる。私は実は批判的ではない。後世にどのような影響を与えるかはともかくサッチャーはEUのお荷物とまで言われたイギリスを立て直した。レーガンは高インフレ、高失業率、高金利の米国を立て直した。要素はハイエク理論だけではないだろうが貢献していることは間違いないのではないか。

日本は1990年代に100兆円を超える景気対策を行なっている。しかし平均成長率は0.8%だともいう。こんな20年ではあるが小泉政権時代は緩やかではあるが経済は成長を続けているのである。

著者は『…公共事業(主として土木工事)に、無駄が多いことも事実である。財政支出を決めてから、実際にそれが行われて効果が出るまでには時間がかかるので、そのころには景気が回復してインフレを増幅してしまうこともある。また減税は、その分が貯蓄にまわるだけで、有効需要はあまり増えない場合もある。いずれにせよ、社会が成熟するにつれて、市場の自動調整機能が働きやすくなることは確かで、この意味では現実がハイエクの理論に追いついたとも言える。….大蔵省の首脳にも、ようやくケインズ経済学を理解できる人が出てきたころ、すでに世界各国はケインズ政策をやめていたのだ』と述べている。

麻生政権以降は再び公共事業投資が増加する。民主党ではコンクリートから人へとしてバラマキがはじまる。これが“投資”のはずなどあろうはずはない。
こうしたことは歴史の審判をうけることになろうが、度々ある選挙を意識する政治家に判断選択は可能なのかと感じる。

本書を通じてすこしハイエクを知ることができた。賢人の哲学をこれからも学びつづけたいと思わせる一冊だった。

 

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>