志高く  井上篤夫

On 2011年12月21日, in 経営者, by admin

志高く 孫正義正伝

ソフトバンク創業者・孫正義のこれまで綴った一冊だ。孫正義氏に関する本は何冊が読んだことがあるが改めて凄さを感じる。思いの強さとこの実行力は類稀な能力だと感じる。震災時の寄付、電力への行動力は常人ではないだろう。批判的に語る人もいる。しかし認めるべきは認めて良いのではないだろうか。

いまのNTTが独占していた電話事業を、第二電電を設立し大きくし価格を下げさせたのが京セラ稲森名誉会長だ。ネット社会をADSLにより価格を変えたのが孫正義氏だと思う。携帯電話についても同様のことが言える。社会のインフラをNTTから解放させたのがこの2人だ。12月21日東京電力はどうやら実質国有化(実際には銀行による融資)されることが公になった。金利リスクを考えれば電気料は値下がりする可能性は低くなったわけだ。この問題解決にも孫正義氏が関与するのかも知れない。

渋沢栄一は明治維新後に官僚を辞し将来の日本に必要な企業を数多く立ち上げた。稲森名誉会長と孫正義氏は規制に守られたインフラを解放する黒船のようなものなのかも知れない。なぜこれだけのことが“できるのか”興味がつきない。本書からわかったことは『ぼくにとって事業家とは、道路を作る、電力のネットワークを作る、社会のインフラそのものをつくること。つまり社会の枠組をかえることだ』と述べている。つまりこれが事業のビジョンなのだ。こうしたことを発想する経営者も数少ないだろう。また考えても実行した人は稲森名誉会長の他にいない。

だがなぜこれができるのか『思いの強さ』だけではかなうはずはない。経営を成り立たせなければならない。それがこの言葉に現れている。『ぼくは無鉄砲にいろんなことを、ある意味でドラスティック(大胆)に、リスキーなことをやっているように見られているかも知れないけど、どういう状況においても絶対に致命傷を追わないようにと耐えず心がけてきたんです』おそらく常人には理解することができない精緻な経営をやってきたのだろう。数百の企業経営“精緻に実行する”まさい神がかっているのではないかとさえ感じる。

そのすごさはボーダフォンの買収に現れている。推測するに2兆円の買収資金に対して1兆3000億の銀行融資を受けている。その借入金利が実質3~4%だという。買収時2006年の長期金利は2%を下回っている。金融も足元を見たように感じるがこれを超えて収益を上げ続けている。さらには2014年には実質負債をゼロにするという。

孫正義氏は自らの言葉で『なにごとも困難はあるものですよ。どんな一流のスポーツ選手でも、怪我をすることもある。しかしそれを乗り越えていける気力と底力、自信がある』こう語っている。
この意味する“信念・拘り・執念”とこれを支える絶対の自信が必要なのだと思う。また『艱難辛苦を乗り越える。これが人の器を大きくする』そう感じるのである。学ぶことが多い一冊だった

 

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