【中国版】サブプライム・ローンの恐怖 (幻冬舎新書)

“中国の危さ”について石氏が論じた一冊。週刊誌的なものでなく、中国の発表や調査をもとにしたレポートである。それは著者経歴からも伺える。著者の石平氏は北京大学哲学科卒業、四川大学講師経て神戸大学大学院で博士課程を取得した識者だ。10/14日付の日経・国際面は【中国内外需に不安要因】として危うい経済について掲載されている。自動車販売台数に紙面の多くが使われ『潜在需要は大きいものの、補助金削減により中間層の新車購入意欲が低下している』とある。サービスを覗いたモノ消費GDPの30%を占め経済に対する影響が懸念される。欧州、米国の経済低下から輸出が減少しこちらの下振れリスクも問題かしている。

 本書はこうした中国経済の問題の根源は過剰な国内投資と高い外需依存度にあると論じる。BRICSの台頭が言われて久しいが決して盤石ではない。現在インフレにも見まわれている中国だけでない。ロシア経済はLNGなど一次産品に寄与するとこところが大きい。シェルガスの開発状況によっては下振れする可能性があると思われる。また日本の軽自動車リッター走行距離は40㌔走るものも生まれている。ハイブリッドをはじめ技術革新の行方によってはレアアースなど一次産品の強みが軽んじられるのではないか。

 しかしGDP世界第2位である中国の失速が世界に及ぼす影響力は大きく、外貨準備高は世界1位である。世界各国への投資やIMFだけでなくEFSTのような欧州への機関にも出資をするだろう。だがその外貨準備高には“からくり”があった。本書そのことについて次にように明らかにしている。

「中国の外貨管理制度の下では、国内企業の稼いだ外貨は企業の手元に入ってこない。それは全部中国政府(中国銀行)によって買い占められて政府の手元にとどまり、政府が持つところの外貨準備高となるわけである。その代わり、中国政府は輸出企業の稼いだ外貨に相当する額の人民元を発行して、輸出の対価として企業に渡す仕組みとなっている」

 その発行される中国紙幣【元】のマネーサプライは尋常ではない。2010年11月の発表によると対GDP比260%に拡大している。本書によれば一般にマネーサプライは50%~70%を推移しているという。このマネーサプライが外貨準備高を可能とし国内投資を可能にしているとも言える。

これから中国経済がどう変化するのかポジティブな要素も多々ある。しかしこうしたネガティブな要素を念頭に置く必要があるのではなか。中国の現状把握に最適な一冊である。

 

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