無料ビジネスの時代: 消費不況に立ち向かう価格戦略 (ちくま新書)

マーケティング担当は悩みがつきない時代だと思う。Webにより戦略は限りなくオープン。独自の戦略構築が難しい時代となっている。無料化は広告、見込客データ入手、One to One…SNSへとつなげる戦略となる。こんな問題意識を持っていたところ本書に出会った。新書のボリュームでありながら「無料化の秘密」をしっかりとあばいてくれている。無料化戦略の基礎知識を求めるのであれば十分に答えてくれる一冊だ。

Googleやyahooの検索エンジンは無料で使える。それだけでなく限度あるにせよメールやサーバーさえも無料で開放している。Webはソフトやサービスを無料で受けられる機会が限りない。日々の生活でもアマゾンの配達料無料。スタバは2杯目が100円。ジャスコやヨカードーは無料配送のサービスを行なっている。通常は有料と考えれば相当なデフレ状態だと言える。商品価格はこれを上回る勢いで下落していく。

マーケットは『デフレ』環境にある。しかし企業は収益を上げ続けなければならない。マーケティングコストは価格に反映することから相当限界があり効率性をより追求する必要がある。“無料”は広告の意味合いもあり広告費に値すると思う。しかし無料で商品提供後に有料に変化させることは難しく相当注意を要するようである。

『…たいていのお店や企業は、複数のモノ・サービス・情報を商品として販売しています。それだけたくさんの価格設定を考える必要があるわけです。同じ商品を、季節や時間帯によって異なる価格で売ることもあり、ランチと一緒に注文したコーヒーは100円というように他の商品との組合せで価格を変えることもあります。毎週水曜日は女性客だけ2割引といった、複数の条件がついた割引もよくあります。このようにしてたくさん設定された価格が、商品の代替えと補完の関係を通じて、他の商品にも影響を及ぼします。一方で、無料も、共同購入型クーポンによる激安も、強いインパクトを持つ価格設定です。…..だから価格設定が上手なお店や企業は、いつでも全体的な価格戦略を意識したうえで、個別の価格を設定しています。その企業全体での価格戦略というパズルを解くうえで、そのなかのひとつのピースとして無料激安をはめ込んでいるのです』

日々の生活でも、夕方に行う飲食店のキャンペーン、デパ地下やスーパーの時間限定や閉店間際から始まり、メールに送られてくる無料や割引など激安に囲まれている。企業はこうした環境化で価格戦略を立てる。この『ピース』をどのように、いつ、誰に対して使うかを熟考する必要がある。無料化は有料顧客を失う可能性もある。著者が言うようにいかにはめ込むかは大変難しいと痛感する。

無料化のマーケティング手法はこれからも開発される。相当な知識武装が必要だと思う。本書はその概略を実にわかりやすく教示してくれる一冊である。

 

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