沖縄と米軍基地  前泊博盛

On 2011年9月27日, in 政治・経済, by admin

沖縄と米軍基地 (角川oneテーマ21)

沖縄に米軍基地が集中し県民の方々が騒音、治安などで苦しんでいる。このことは日本人全体が共有しなければならない問題である。しかし変えることのできない事実として思考停止している人も多い。軍隊は本土だけでなく世界中にある。果たして沖縄での問題はこの地域独特ことなのか。本書を手にするまで知らないことが多すぎた。
神奈川県厚木市に米軍基地がある。この近辺に幾度か仕事で出向いたことがある。大和市を含め広い範囲で騒音の渦の中での生活を余儀なくされている。治安問題などもあるのだろうが沖縄と共有出来るレベルではないと思う。本書によると『…統計が確かな72年から2010年までの38年間だけでも5700件を超えている。うち1割が殺人、強盗、強姦などの凶悪事件です』とある。単純に計算して年間15件の凶悪犯罪という数値は高い。警視庁データなどを参考に試算すると人口ベースの凶悪犯罪件数は年間74件である。約20%が米軍がらみの犯罪となる。こうした都市部での生活者は経済などとリンクして考えやすいが“犯罪率”という視点からも大いに改善しなければならない。

沖縄米軍は日本の問題である。菅直人前首相が副首相のときに問題が大きすぎるので“独立してくれないか”と発言したらしいが、方向性すら示すことができないのが現実だ。残念だが米国に決めてもらいそれを粛々と実行するのが現実のようにも思える。
本書は沖縄生活者の目線で日米安保や米軍基地問題を論じている。ジャーナリスト・研究者の視点であるから民意ではないのかもしれない。十分に勉強になる本書だが特に気になる一節があったので紹介したい。

『12兆円という莫大な国家予算と38年間の期間を経てなお政府主導の沖縄振興策、とりわけその目標となった「自立的経済発展」が田勢できない理由を、琉球大学の大城常夫名誉教授は「安保維持政策としての沖縄振興策の当然の帰結」と指摘してきました。沖縄が「経済自立」を手中にすれば、さらなる経済発展に必要な場所を求め、米軍基地返還の動きを招きかねない。そうなれば在沖米軍基地に大きく依存する日米安保は根幹を揺るがしかねない。日米安保を将来に渡って安定的に維持、運営していくためには米軍基地の拠点として沖縄の経済発展をいかに抑制し、米軍基地なしでは地域経済が成り立たないような体制を如何に保持するかが日米両政府にとって重要な見方です』

とあり。正々堂々としておらず腹に落ちないのは私だけだろうか。国として正面から犠牲を強いるが….ということはできないのだろうか。本書には多々日米安保における米軍基地のありかたについて反論がなされているが、俯瞰して考えれば沖縄に基地が必要なことは明らかではないのか。そうであるのなら大臣クラスの職責の方が沖縄担当 として赴任し関係性を保つようなことをすることが必要ではないのだろうか。もっと沖縄の方々を大切にしなければならないのではないか。

これから普天間問題や中国との関係性などから、沖縄問題を議論する機会が増えると思う。どの立場であれ知識として抑えたい一冊である

 

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