日本経済を学ぶ上での要点が詰まった一冊。Web,新聞、テレビと経済に纏わる話題は絶えない。本来基礎的な経済学はリベラルアーツとして学ばなければならないという。その一科目として本書を加えても良いのでないかと思う。
副題には【歴史・現状・論点】とありこの筋で纏まっている。構成は副題の通りであり全11章からなる。日本経済は“失われた20年”と言われて久しい。これを踏み台にして次の展開が見えているのならまだしも“産業空洞化”へと進みつつある。パラダイム転換が求められているにもかかわらず旧来の政策のマイナーチェンジでお茶を濁しているのが現状だろう。今日9月14日の日経には無借金経営企業が増加について記されていた。先が見えないことの表れである。
経済は市場経済信認型か不信任型かに分かれる。日本はその中間を行っている。本書ではその構造を次のように解説している。
「市場経済の効能にどれくらい信頼を置くか、「市場の失敗」をどれだけ重く見るか。『公』の役割をどのくらい必要と考えるか。この点をめぐって経済学者は大きく二つの陣営に分かれる。市場を信頼し、市場の失敗はたいしたことがなく、『公』は最小限でいい、とする立場は市場主義とでも呼ぼう。それを徹底する立場の呼び方は市場原理主義でも市場万能主義でも良いだろう。この人たちは『公』の役割を政府の失敗もあるとおう点を強調して否定する。この立場は経済学における右派をなす。その反対の考えか方、つまり市場の失敗は軽くなく公は必要だ、という立場は左派ということになる…」
小泉政権の右路線から振り子は左に戻っている。どちらも結果はでていないが“公”に経済を支えるパワーはすでにないだことは明らかである。そこで『知恵』ということになるのだが、知恵であれば民間の知恵を取り込むべきだろう。
本書は歴史を綴っていることから類似の現在と類似のケースを見ることができる。またメディアでは南欧州の問題を日々扱っている。本書で得た知識をもとにこうした事例を検証するのはとても楽しいひと時である。
すべての社会人にお勧めしたい一冊である。