新自由主義の復権 – 日本経済はなぜ停滞しているのか (中公新書)

さすが“中公新書”と言いたい。副題に「日本経済はなぜ停滞しているのか」とあるが、この紙幅でこれだけ幅広く問題を提起し、処方箋を示したものを最近読んだ覚えがない。

経済停滞の要因は複合的であり、処方箋も対処療法にすぎないことは間違いない。その最たるものが政治の停滞だろう。この点について序章で次のように示している。

「市場が効率的に機能するためには、健全な市場を守るための競争政策や、震災への対応を含めた社会保障など政府の役割も重要である。問題なのは、政府による市場への過度の介入から生じる「政府の失敗」である…現実には経済社会の環境が大きく変化したにもかかわらず、過去の高い経済成長時代の制度や刊行がそのまま維持されていることが、経済活動の効率性を損なっている。そのような「政策の不作為」が長期経済停滞の真の原因であれば、その大胆な改革なしには、いつまでも問題は解決しない」

高度成長期を基軸にした“政府の思考”や“法律”を変えることが経済政策に求められる。これは消費者にも言える。高度成長期が人口ピラミッドを考えれば現在の社会保証政策が成立しないことを理解する必要がある。“成立はしない”しかしそれを前提としてベターではないベストな方法を考えなければならない。求める規制改革ができない理由を次にように指摘する。

「あらゆる制度や規制は、それが生まれた時代の環境に適合するようになっていることから、経済社会環境の変化に応じて、常に改革される必要がある。しかし、日本では戦後半世紀企画も続いた高い経済成長の時代の成功体験に、国や企業が慣れ親しんでしまい、それが終わった後も、いつか古きより時代が戻ってくるかのような幻想を抱いて、ささやかな既得権益にしがみついている。そう、まるでかつての社会主義国家のように。これが、構造改革に総論では賛成でも、各論では反対する「先送り政治」を生んできた」

代議士、官僚ともに家業としての成功体験者や受益者が多いように思う。“イノベーション”などとは程遠いグループが司っているのが“政官”の世界なのだろう。いまも続く社会体制を著者は【日本における伝統的な“反自由主義”の思想】と言う。また新自由主義を【政府による市場への個別介入よりも、一定の枠組みのもとで、個人や企業が利益を追求する仕組みを活用するほうが、社会に望ましい結果をもたらす。これは、多様な商品・サービスが溢れている先進国経済では、市場の価格変動に対応した分権的ない意思決定のほうが、中央集権による司令よりも優れているという経験則に基づいている】と述べている。小泉政権では“選挙は勝利”明らかに政策として掲げられている“新自由主義”は反対というおかしな現象が起きた。その後政策転換されるものの何ら解決に至らずいまに至っている。
本書は新自由主義の正当性について250ページの渡り論じているものである。機会をみてレビューを重ねたいと思う。政治・経済・社会を考察する上で必読の一冊だと思う。

 

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