新編 後藤田正晴 保坂正康

On 2011年8月24日, in 政治・経済, by admin

新編 後藤田正晴―異色官僚政治家の軌跡 (中公文庫)

この2ヶ月程『後藤田正晴』に関連する本を10数冊読んだ。二十歳頃から床屋談義的に政局を面白く見てきた。この数年は『危機感』を持って政治を観察している。日本の総理大臣は長期政権そのものが珍しい。“追米・経済拡大”が可能であればビジョンが無くとも政治は可能だった。しかし94年(宮澤内閣退陣)以降、混沌を極め政局を楽しめる余裕が無くった。
確かにGDPの下落、就職率の低下、3万人を超える自殺者など世相は厳しさを増している。だがもっと深いところ不信と不安を抱える。それは『揺るぎ無い背骨』が消え失せたからではないか。この菅首相は8月で総理を辞する。批判的に“首相に成りたかったのであり何をしたいがない”と言われる。これはご本人の著書からも十分に伺えることだが、は、これが宮澤内閣以降の首相の特徴ではないだろうか。またあったとしても『揺るぎ無い背骨』が無いがために崩れやすいように感じてならない。しかしこれは首相というリーダーだけの問題なのか。それを支える官房長官や秘書官に左右されるのではないか。組織論の“右腕人材”と相通じるものがあるのではないか。そんな思いから『後藤田正晴』関連の著書を読んでみた。

履歴をざっくりと消化すると、後藤田正晴は大正3年生まれ。東京帝国大学卒業、高等文官試験合格、内務省入省、第二次大戦兵役。その後復員。警察官僚として警察庁長官、中曽根内閣で官房長官、宮澤内閣で副首相を歴任している。
圧倒される経歴ではるが、この能力が先天的か後天的なものかは知る由もない。しかし本書を含め影の努力者であることは間違いないようだ。また生い立ちは厳しいものがある。7歳で父、10歳で母を亡くしている。悲しみを推し量ることなどできようがないが凛とした人柄に影響を与えたのではないか。

インタビューから著者は次のように感想を述べている。

『幼くして両親を無くした寂しさ、孤独を癒す術は、たぶん人によって異なるのだろう。十歳の後藤田少年が選んだのは、両親のいなことを自分の努力不足や他人に負けたときに言いわけにしない、逆に孤独感をバネにして強く生きるという道であった。誰にも負けたくない、自らの志は必ず貫徹するという意思を持つと考えることであった。無論十歳の少年は、その年代でははっきりそう自覚したとは言えないかも知れないが、すくなくともそうした道に向かう出発点に立つことにはなったのである』

天は厳しさ与え自らは強さを養ったと言える。先天、後天などでなく“どう生きるか”を定めたことがこのあとの人生を構築したことは間違いない。さまざまな書籍を照会しながらじっくりと人物を追っていきたいと思う。

 

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