渋沢栄一  島田 昌和

On 2011年8月20日, in 経営者, by admin

渋沢栄一――社会企業家の先駆者 (岩波新書)

副題に「社会起業家の先駆者」とある。渋沢栄一は、近代史最初の国難である“明治維新”を農民、武士、官僚、企業家として業を成し得た。そんな人物であるから成し得たのだと思う。国立第一銀行、王子製紙、東京海上、サッポロビール、日本郵船など長期に渡るリーディングカンパニーの代表、株主という結果を出している。こうした強烈な実績は周知されている。本書を通じ興味深かったのは「ベンチャーキャピタル」としての一面である。

金融の直関比率は明らかでないが融資制度が未整備であったであろうことは想像が付く。海外渡航の経験がそれを成すのか知る由もない。しかし日本の礎を築いたことは間違いない。

「損益勘定でも収益資産編入や協同積立基金、渋沢自身への利益配分など資産管理の原資となるような収益部分を持っていた。しかしこれらの利益部分は近代産業の草創期であることから事業リスクが未知数または高い会社へ出資したり、個人への融資に消極的な金融機関に代わって個人に対する多額の貸付を積極的におこなう渋沢にとって、備えとして絶対に必要な原資だったのである。この時期には解散に追い込まれる会社がいくつもあり、その際には共同積立金を取り崩して償却したのである。」

環境の違いから比較することなでできないが、現代のキャピタルとは大きな違いを感じる。米国で聞く“エンジェル”に近いのかも知れない。また当時の報酬は役員報酬というよりも出資への配当に重点が置かれていたとのことである。いまでいう創業経営者の状態に近いのかも知れない。

本書は渋沢栄一の生い立ちから人脈、国づくりへの考えかたなど新書のボリュームを超え教示を得られる。近現代史の側面を学べる良書だと思う。

 

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