柳井正の希望を持とう (朝日新書)

ユニクロ代表者である著者の本は社員やこれから社会に旅立つ若者に向けているものが多い。しかし以外と琴線に触れ考えさせられる。大器晩成は遅咲きというイメージがある。また“成長期”とは肉体的な成長を示す言葉であるが、能力の進化や精神的成長も含むのではないかと思う。よって成長期とは“諦めるそのとき”までの間を示すのではないか。こうした考えの下本書を読めば齢40歳を超えても心に素直に入ってくる。

 人が成長を可能にする要因は何か。経営者なら企業ということにも繋がる。これは目標や希望を持ち続けることにあるだろう。経営について“危機感”の重要性を教示する。

「自己変革について、私がこれほどまでに強調するのは、経営者は常に危機感を感じていてなくてはならないと信じているからだ。会社というものに安定や安心はない。努力もせず、何の手も打たなければいつのまにか危機が忍び寄ってくる。危機感を持って、細部まで点検をしていないと、会社なんてすぐにつぶれてしまう….経営はいつも断崖の上を歩いているようなもので、緊迫感を維持していないと、会社そのものを維持することもできなくなってくる。さらに言えば、多くの人は危機感と不安を同一視している。だが両者は性質の違うものだ。不安とは、漠然としたもので、正体を突き止めることさえできればたいていの人はほっとひと安心する」

 “漠然とした不安”から逃避してはいけない。常にその要因を考え消し込むことが求められる。考えるのでなく悩むような状態はメンタル的にも危うい。著者がいうように「性質」が違うのだから不安要素をあぶり出すことがはじめの一歩なのだろう。若い頃は毎日書きだした著者は述べている。自信に満ち溢れている柳井社長が「不安を書きだす」とは想像しがたい。しかしこうした愚直な行動を続けること以外に成功への道は無いように思えてならない。成功者の事例に事欠くことはない。

自らを戒めることを踏まえ著者の考え方を紹介したい。

「経営とは現実の延長線上にあることを一つひとつ形にしていくことだと考えていたわけだ。毎日、努力さえしていれば、その歩いた先に何かしらの結果が待っていてくれると素直に思っていた。しかしそれでは“できるかできないか”がよくわからないうちに、“自分達にはできない”と自己規定することが起きてしまう。ちょっとでも障壁があると、すぐに方向転換したり、目標の修正をしてしまう。経営における「ブレ」とは、こうしたメカニズムで生まれてくる。対してジェニーン氏は「現実の延長線上をゴールにしてはいかない」と強調する。最終的な目標を明示して、その実現のための方法を規定し、組織全体で実行していくことが“ほんとうの経営”だと思っている」

突き詰めるとこれいがいに成功の法則・生き残る方法はないのだと思う。

 

コメントをどうぞ

メールアドレスが公開されることはありません。 * が付いている欄は必須項目です

*

次のHTML タグと属性が使えます: <a href="" title=""> <abbr title=""> <acronym title=""> <b> <blockquote cite=""> <cite> <code> <del datetime=""> <em> <i> <q cite=""> <strike> <strong>