オバマも救えないアメリカ (新潮新書)

アメリカは階層社会だ。日本とは医療保険制度が違うアメリカは階層社会で苦しむ人々は医療をうけることすら困難場合が多い。また大学などの学費は日本の数倍となる。国内でも東大などの進学を可能にする親の年収は平均を大きく上回る。早期にこの重要性に気づけば取り返しは可能である。ファイナンスの支援はあるが米国では日本のようにはいかない。負の連鎖を絶ち切ることが困難なのである。

問題のひとつである“医療保険問題”の解決を掲げオバマは大統領となった。辛うじて法案を通したものの求められていたものとは大きく違った。こうした問題については貧困大国アメリカ:堤未果でも知ることができる。“政府支援がどうあるべき”は環境が変化する中で断定的なことなど言えるはずはない。選挙において選択をすることになるが、正しい選択が可能だとは到底思えない。
健常者であれば“時代に合わせる”ということになるのではないか。制度は変動する。公約は約束ではない。よって多様なメディアから発信される情報から判断選択し自らの行動に結びつけるということになるのではないだろうか。本書はこうしたアメリカ民衆の声を幅広くレポートされている。

「その期待は裏切られた?それとも法案を可決させたことに満足している?」
「どちらでもないな。僕自身、2008年、2009年はオバマ・フィーバーの中にいた。でも、今振り返れば、彼なら何とかしてくれるかも知れない、という淡い願望だった。彼が口にしたことがすべて上手く運ぶなんてあり得ない。政治家は、どんな時だって国民にもっともらしいことをアピールするけど、実際は弱者の苦しみなんて分かっていないんだ。日本だって同じだよね。一体国民の何%が内閣を信用している?日々の生活に満足している?今回の津波による被害を見れば、簡単にわかるじゃないか。この国だって政府を称えている人なんてほとんどいないよ」

“学問のすすめ”を通じて福沢諭吉は政府と信頼について多くの紙幅を取り重要性を訴えている。しかしどうやら難しいらしい。いみじくも本日松本大臣が軽口により辞任している。安倍内閣では農林大臣が連続して辞任した。改造を含め7人の大臣が就任したのである。更にそのうちの一人はベルを無断で押し議員辞職に追い込まれている。すでに民主主義という制度が疲労しているのではないだろうか。

そういう視点を裏付けさせる一冊だったと思う。

 

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