独学のすすめ  加藤秀俊

On 2011年6月27日, in life Style, 書評, by admin

独学のすすめ (文春文庫 か 3-1)

本書は1975年に文藝春秋からの出版を2009年に改訂版としてちくま文庫から再販されたものだ。当時を少し調べると日本は終戦から30年、沖縄返還から3年、学生運動も終焉を迎えてきた。しかし翌76年、田中角栄元首相逮捕。混沌からの離脱はいますこし時間を必要とするようである。
“独学のすすめ”とあるが学校教育を正面から否定しているものではない。明確には述べていないが“教育システム”を否定しているように感じる。どこかに“受身の学び”が蔓延としていたのかも知れない。学ぶ“意欲”について著者は次のように述べている。

「アメリカの心理学者にD・マクレランドという人がいる。その著書….達成動機という題で日本語に訳されているから、すでにご存知のかたもいらっしゃるかもしれない。
この書物はかなり大きなホンダが、その要点をかいつまんでいうと、およそ社会が生き生きと活気をもっているときには、かならずそれに並行、あるいは先行して、その社会を構成する人びとが強い“達成動機”をしめした時期がある、という一種の歴史心理学なのである。
達成動機とは何か。それはわたしたちの日常言語におきかえて言えば「やる気」ということである。なにごとかを成しとげてやろう、という積極的な気構えのことである。そういう“やる気”が根源になって、社会は発展し繁栄する、というのがマクレランドの学説なのだ」

何かを成し遂げるには“学び”が必要である。学ぶことで目標達成へ近づいていく。希望のつくり方の著者である玄田有史、東大教授は勉強だけだが問題を解決すると論じている。無論、座学だけを指しているのではない。職人のような技術力も含むだろう。“やる気”モチベーションが根底にあることが基軸なのだ。さらに言えば求める完成度が重要なのだと思う。尊敬をする友人の行動を見ていると“そこまでやるのか”と思わせられることが多々ある。その都度内省し自己の行動を振り返るのだが中々その域に達することはできない。己の未熟さを恥じるばかりだ。

本論から些か脱線するが、D・マクラレンドは“やる気”と“社会の発展と繁栄”を結びつけている。企業に置換して考察すれば当然のことだと思える。しかしどこかいまの日本社会そのものを言い表すように感じてならない。失われた20年というが決してそうではない。小泉内閣の5年間は社会に光明があったように感じる。守旧派は否定ともどることの無い時代を夢見ていた。そうでない人はどこか前を見ていた“やる気”があったように感じる。“やる気”が経済を押し上げたに違いない。

学ぶということを通じ何ができるかを考えさせられる一冊だった。

 

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