TPP亡国論   中野剛志

On 2011年6月7日, in 政治・経済, 書評, by admin


TPP亡国論 (集英社新書)

震災でTPPへの意識は薄れたが他国は締結に向かって協議が進められている。元来TPP賛成派であった。しかし恩師に問題点を教示され再考足された。そんな時に本書にであった次第である。本書はTPPに絡む経済、歴史、政治的思惑などすっきりとまとまっており読みやすい。著者のスタンスはTPP反対なのだが代案の乏しさが残念である。

まずTPPについて簡単にまとめてみたい
TPP  : 2006年 シンガポール、ブルネイ、チリ、ニュージーランドにて締結。2010年3月 アメリカ、オーストラリア、ペルー、ベトナムが加わり8カ国で広域的な経済連携協定を目指すものである。農産物、工業製品の非関税化に加えサービス貿易、政府調達、知的財産、金融、人の移動などを対象にする包括的なものである。

こうした国策は国家戦略としてのグランドデザインを示しその達成手段として必要であると論ずることが望ましい。しかし中国の領海侵犯(尖閣問題)を処理できなかった菅首相がAPICで高々と第3次開国宣言をしたことによりメディアに扱われ始めた。
TPP推進は韓国を意識してのことである。韓国はアメリカ、EU、ペルーと既にFTAが締結されている。当然のことながら日本もFTAを進めている。しかしEU、アメリカなどとは交渉のテーブルすら着けていない。こうした状況でTPPが進められることとなった。

大まかには農業のGDPを優先し工業製品の輸出が疎外されて良いはずがないというのが賛成派の意見。日本の農業がこれでダメになるというのが反対派である。いまだ国会でもめているばら撒き4KはFTAを意識してのことだと思っていたのだがどうやらそうではなかった。

本書TPP反対論は、デフレ、貿易黒字主導戦略、食料問題などさまざまな点から反対を論じている。また韓国の成長は対円に対するウオン安であるとも述べている。著者主張はTPPに参加しても経済成長は難しい。米国からの輸出が強化されこれまで以上にデフレになるというのである。

経済成長が困難な理由は海外生産比率の高まりを指している。

「すでに日本の製造業の現地生産は進展しています。日本の自動車メーカーは、アメリカでの新車販売台数の6割以上を、現地生産車としています。報道によればホンダの2009年のアメリカでの現地生産比率は、8割を超えているそうです。日本の輸出産業は為替リスク回避のために、すでに海外生産比率を高めているのです….関税の有無はもはや輸出の増減と関係なくなりつつあるということです」

 これではTPPの価値は無くなる。

 これは海外売上高比率が高い企業を示したものである。2位につけているホンダの海外生産比率が8割であれば他企業も類推して考えることができる。高齢化社会を迎え国内売上高が大きく成長することは考えづらい。

“よってどうしたらよいか”といった結論をだすことは難しい。しかしこうした現状を踏まえTPPを含めた政治、また経営について考察をしなければならないと考える。

 

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