挫折力  冨山 和彦

On 2011年6月6日, in 書評, 経営者, by admin

挫折力―一流になれる50の思考・行動術 (PHPビジネス新書)

著者は産業再生機構COO就任で一躍著名になった。著者は順風満帆に登り詰めたのでなく、その都度苦しい判断選択を強いられている。学生時代に司法試験に合格し司法修習生にならないという選択。BCGを一年で退職し上司と起業をする選択、スタンフォード留学から帰国すると会社が傾き6年もの間大阪、仙台など地方の在住することとなる。私的に言えばうらやましい気もする選択と挫折だが、エリートとしては相当苦しいことなどだと思う。
運命か果たして呼びこむのかは知る由もない。しかし判断の転機や挫折は多くの人が経験する。経営者であれば人生が180℃変わる可能性すらある。サラリーマンでも積上げてきた人の挫折は想像を絶するものがある。

本書は挫折力が「人を強くする」ということを述べている。自らを振り返ると大きく3つの挫折を経験している。この場でカミングアウトどころか生涯人に話すこともないだと思う。その理由は経験の都度過去の自分をたち切ってきたからである。本書でいう過去の自分と現在の自分である。
挫折は負けであり失敗である。これを冷静に第3者的に考察することが必要である。本書ではこうしたことを次のように述べている。

「失敗には比較的、はっきりとして敗因がある場合が多いのに対して、成功の多くはいくつかの要因が複合している場合が多く、これという原因を特定することが難しい。いわゆる“負けに不思議の負けなし”である
だから、はっきりした敗因から、さらにその背景にある原因因子を遡っていくと、結局自分の何が足りなかったか、さらには自分自信の特徴、得意不得意に至るまで実に多くのことを知ることができる」

失敗工学の畑村教授なども類似のことを述べている。敗因を分析し次の局面で経験を活かすべを考察することは成長の礎となるのは間違いない。敗因の一つに“性格”が関係する場合が多い。ロジカルな説明が興味深い。

「大抵の人間がこの2つ(性格とインセンティブ)に支配されて行動することを理解することは、人間関係の泥沼を生き抜く基本的な知恵となる、コンピューターにたとえると、人間にとって知識や知性、あるいは道徳や倫理といった高尚な事柄は、性格とインセンティブというOSの上で動くプログラムにすぎないのかもしれない。しかも仕事環境、家族環境、あるいは年齢や健康状態によって、特に動機づけの要因のほうは一人の人間の中でも変化していくので、OSは不安定で取り扱いの難しい代物なのである」

OSというメタファーが実に適切であるように感じる。また環境変数がさらに複雑化をする。冷静な自己分析能力、孤独に耐える力、挫折後の環境分析力が再起を左右するように感じる。

生き方の参考書とも言える。是非手にしたい一冊である。

 

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