BCG流 経営者はこう育てる (日経ビジネス人文庫)

過日“ポーター賞競争戦略論セミナー”が行われた。ポーター賞とは一橋大学大学院国際企業戦略研究科が“競争戦略の理論と実践を日本に広めるための賞”として創設されたものである。幸いにもセミナーに参加することができたので聴講をしてきた。セミナーでは著者、ストトーリーとしての競争戦略を書かれた楠木 建氏などが講演をされた。
著者である菅野氏は存じあげなかった。しかし著者の考えをより深めたい考え本書を拝読した。経営者に求められる能力は後天的に身に付けられるというのが主張である。
本書の特徴は著者の仮説を、日本を代表する7人の経営者にインタビューし演繹的に論証していることにある。

著者の考え方は経営者に求められるロジカル・シンキングのようなサイエンスの力より、メンタルと言っても良いアートな力に重点を置いていることにある。それは形式知であるサイエンスは座学などの学びで解決が可能だからである。著者を批判する気持ちは毛頭ない。しかし中小企業やマイクロビジネスの文脈に落とすと赤点なのではないかと感じている。よってサイエンス力のアーカイブを積み重ねることを合わせて行う必要があると思う。

さてサイエンスPlusアートである。まずアート係スキルとして5つを紹介したい。

スキル1 強烈な意思
スキル2 勇気
スキル3 インサイト
スキル4 しつこさ
スキル5 ソフトな統率力

なにか当たり前のような言葉が並べられたようだが、実際これができないから成長できないとも思える。著者は、これらは掛け算の関係にあるという。

「…5つのスキル全部で満点を取る必要はないが、どのスキルも一定レベルには達し得いないといけない。なぜならば、経営とは、個別スキルを組み合わせて使いこなして初めて全体が有機的に機能する。“総合芸術”だからである。言い換えれば、これらのスキルは、足し算でなく掛け算の関係にある」

0かマイナスがあればロジカル・シンキング・サイエンスがどれだけできても総合で
はマイナスとなり、経営はおぼつかなくなるということになる。個別の説明は紙幅の都合上難しいが1に挙げられた“強烈な意思”とは“結果を出す”という意思である。結果に執着する。当然のようであるが、求める結果がでない。そのためにどれだけの思考をしているかと自らを内省せざるを得ない。“考えるしつこさ”と“実行のしつこさ”の欠如に過ぎない。

 「考え続ける力、実行し続ける力」この2つを持つことができれば大抵のことは可能になるだろう。本書はこうした力を身につける方法を「自分なりの訓練方法の構築」「訓練法を繰り返し習慣化」「体験」と3つあげている。魔法や特別な方法などはない。現実的には“簡単な方法”などないのだ。“達成した人”が、全員がこの3つをあげるだから間違いはないだろう。本書はドラッカーが随所で引用される。ドラッカーは次のように述べている。

【成果をあげるための秘訣を一つだけあげるならば、それは集中である。成果をあげる人は、もっとも重要なことから始め、しかも一度に一つのことしなしない】

 成功者の成功要素は共通しているようである。全般を通じとても勉強なる一冊だった。時折読み返すことになりそうである。

 

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