ワークショップ―新しい学びと創造の場 (岩波新書)

個性が強調され価値観や生き方は多様化している。たとえば30代でもニートやフリーターもいれば、上場会社の代表や世界的企業の軸をなしている人物もいる。社会観も大きく違う。果たして30年前にこうした現象はあったろうか。前者の数は圧倒的に少なかったと思う。“中小企業の社員”はここまでではないが多様化している。多様な価値観を持った人が売上や収益また社会的責任を果たすために一つの枠組みの中で仕事をしなければならない。そんなときは、まず相手の価値観や仕事の考え方を知る必要がある。ワークショップはこうした問題解決に大いに役立つ。現代社会はこうした学びの機会がより求められているのである。

著者はワークショップの意義について次のように述べている。
「参加、体験、グループという三つがキーワードになる学習法だ。参加とは先生や講師の話を一方的に聞くのではなく、自ら参加し関わっていく主体性、体験とはアタマだけでなく身体と心をまるごと総動員して感じていくこと、グループとはお互いの相互作用や多様性の中で分かち合い刺激しあい学んでいく双方向性、などをあらわしていく」

双方向、全体、ホリスティックな学習と創造をワークショップは可能にする。会議などで“声の大きい者”の意見が主流になることがある。また役職が上位者の意見が通ることが一般的とも言える。その理由は情報量と立場の違いとも言える。また発言と責任、自分の仕事になるからなどということもある。創造的な仕事がこうで良いはずはない。新たな“コト”を創出する必要がある。それには発言とともに“聞く”ことが重要となると本書では述べている。子供だましのようだが真実であることに代わりはない。

著者は博報堂社員の視点から「本当に必要ないい企画を創りだすために、得意先と広告会社の担当者とが、受ける側と提案する側としてではなく、共に課題についての情報や知見を持ち寄り、一緒に考えていく場を持とう、との意図を込めてワークショップという言葉が使われ始めている」と述べている。

これは取引先との関係性であるが“見えないなにかを生みだす”ときの考える【BA】がワークショップの成功要因のひとつなのである。BAについて「場というのは、こうして参加者同士の関わり方の質の積重ねの中でできていき、ある種の磁場というか微細な力を持つフィールドのことだ。参加者一人ひとりの態度が場を作り、場が参加者の態度の変容を促すという相互関係にある」と述べている。

「正」「反」「合」を求める弁証法を可能にするものこうしたBAが必要なように感じる。またBAはバーチャルなwebでは難しいと言われている。しかしSNSによって補うことは不可能だろうか。

意味深い一冊だった。

 

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