世界経済のオセロゲーム (日経プレミアシリーズ) (日本プレミアシリーズ)

 世界経済がオセロゲームだと思ったことはない。しかし弱電業界や携帯キャリアなどがオセロゲームのようだとは感じていた。本書を通じて主軸通貨や経済的覇権国または政治体制がオセロのような可能性を秘めていることが理解できた。結論を先取りすればフルスピードで変化する政治経済はオセロそのものということである。本文を少し引いてみたい。

「世界経済のオセロゲームは11年に入って、予想外のスピードで進んでいる。一つは、中東諸国で起きた政変のドミノ倒しである。ツイッターやフェィスブックなどインターネットを通じて、瞬時に大勢の人々に怒りが伝わり、大成変革をもたらさいた。グーグルのエリックシュミットCEOが10年11月~12月号の米誌『フォーリン・アフェアーズ』に寄せた論文によると『デジタルの破裂』はネットを通じた市民の力が国家の情報統制を切り崩してゆく姿を描き出す」

このように述べている。中東情勢は未だ混沌としているものの、まさにオセロゲームと言ってよい。これはフェィスブックなどデジタル世界の影響が強いことは事実である。しかしG0時代であること、世界的指導者がいないことがその背景にある。本書もそのことを追認している。こうした混沌が短期間で収まるとは到底思えない。

こうしたことを少し日本の文脈で考えてみたい。本書の見出しから引用すると(1) 交易条件が悪化した日本(2)22兆円の“資源・食料税 (3)下がり続けるサラリーマンの時給、などセンセーショナルの見出しが目に付く。しかし本書は調査・分析の元で論じられている。これはまさに事実なのだ。

産業空洞化に関して「世界の自動車生産は回復する。だが問題はどこで作るかだ。そして新興国の台頭、為替、法人税、環境問題などを考慮すると、もはや日本では作れない時代になった」という自動車メーカ会長のインタビュー引用している。これはトヨタの日産化とも言えるだろう。
政権選択の選挙は「自民党が生産者ないし企業、つまり稼ぎを重視する党、民主党が消費者ないし生活者、つまり配分を重視する党とすれば、団塊の世代が第一線から退くにつれて生産より配分を重視する民主党に追い風が吹いたのである」という表現がされている。今後自民もこの傾向は強まるだろう。どちらが自分に取りメリットがあるかという判断で選択がなされると思いたくない。しかし問題が深刻化していることは否めないように感じてならない。

『自助自立』ということばがある。広辞苑を紐解くと自助は『自分で自分の身を助けること、他人に依頼せず、自分の力で自分の向上・発展を遂げること』とある。自立は『他の援助や支配を受けず、自分の力で判断したり身を立てたりすること』と書かれている。私はこうした時代を迎えたのではないかと感じている。自助自立することで始めて社会貢献が可能となる。これを自らの第一義としなければならないと痛感する。

読みやすく中身の濃い新書だった。

 

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