昨年9月に出版された詩的寓話。英文、日本語訳で構成されている。著者は現在、内閣官房参与として福島原発問題の解決に携わっている。またダボス会議やブタペスト・クラブ日本代表としても著名である。
実は周囲に“田坂信者”と言っても過言でない方が多い。あまり著者の作品を読んだことがなかった。内閣参与になれたのを機会にアマゾンで数冊発注し、断続的に読み込んでいる。
石原都知事は「震災への日本国民の対応をどう評価するか」と質問したところ、「日本人のアイデンティティは我欲。 この津波をうまく利用して我欲を1回洗い落とす必要がある。 やっぱり天罰だと思う」と語ったという。知事は信仰心が強いという。名もない石像に手を合わせる心を持つと聞く。著者の“日本の力”を思う気持ちと知事の心と相通ずるものがあるように感じてならない。“我欲”でなく“共存・共創”という本来のアイデンティティを取り戻せということではないか。そんなことから書評にこの発言を引用した。
目に見えない資本を大切にしなければならないと本書は述べる。
知識資本 関係資本 信頼資本 評判資本 文化資本 共感資本 と本書は述べている。こうした相互の関係性から創出されるコトが重要なのだと痛感する。
政治は混沌とし機能不全であるようにも見える。総理は山口県の出身である。原発は福島である。長州と会津何かここに歴史的な運命があるようにも感じる。知事の我欲はまさに政治の中でもっとも蠢いているのではないだろうか。著者が論じる“日本人の心”があるとするならもっとも欠乏しているのは“政治家”ではないか。