ユーロ連鎖不況 (PHP新書)

ネーミングで買った本。大当たりだった。EU財務問題の論述かと想定したがEUを題材とした日本の財政問題が主であった。財政や国会などを題材とした書籍を取り上げてきた。本書は【日本財政はトリプルB】だと述べている。

先般S&Pは“ダブルAマイナス”だったと思い出されるかたも多いと思う。著者のトリプルBは定量分析の結果に限った判断ということである。著者はBNPパリバ証券クレジット調査部長でもあり他の資料からも、私は信頼感が持てると判断した。世界を騒がせたギリシャがBBマイナスであるからそれ以下ということになる。これに識字率や過去の実績、増税余地など定性化情報を加え現在の成績となっている。定量化情報とは“決算と同様”である。ようするに相当ひどい決算ということだ。

こうした決算の企業に果たして金融機関は融資をする要因だろうか、また市場でファイナンスは可能なのだろうか。腹立たしい気分にすらなる。ゆうちょ銀行は80%を国債で運用しているという。またゆうちょ銀行にGPIF(年金積立金管理運用独立行政法人:厚生年金、国民年金の運用団体)の運用分を足すと46%となり金融機関の約半分は国らしき団体が保有しているということになる。ゆうちょ銀行は“2000万を上限とすべき”という発言の本音はここにあるのだろう。BIS規制の影響力を受ける金融機関も資産対し20%~25%の保有をしている。評価が下がれば自己資本比率が下がることは容易に予測される。その時は果たしてどこが引き受け可能なのだろうか。中央銀行以外に考えづらい。

著者はEUスペインのケースを次のように述べている。「ユーロという共通通貨を使い彼らは、それぞれの国の中央銀行の上にECBという元締めがいることから金融政策も自由ではありません。では何ができるかというと財政政策ぐらいしかないのです。自国の問題を調整弁として財政政策しかいないという現実に対し、膨れ上がった財政赤字を総合的に判断すれば、やはり問題して聞けし難しいだろうスペインが売られるだろうというのがヘッジファンドの考えです」

売られるというスペインのS&P評価は日本より格上である。また中央銀行の戦略が与える影響が大きいことは少し以前のことではないだろうか。バーナンキ米連邦準備制度理事会(FRB)議長は以前のエコノミストに中央銀行の“限界”について論じている。違いはあるかも知れないがEUに限ったことではないと私は思う。日本に限って言えば“最後の出資者”と“モラルハザード”のバランスをいかに取るかの責任も増すように思える。

ここまで日本の国債評価と処理、またEUスペインとの比較を著者の論述をもとに簡単に行なった。あきらかなことは“国会、政治のプライオリティがあまりにもひどい”といことである。我々はどうすべきか。真摯に考えるときがきていることに間違いない。
日本の現実を知る一冊である。

 

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